早春の漫才祭

THE VERY BEST OF MANZAI 2+
2/25 座高円寺 19:00


結構前になってしまったけど、K-PROさんの記念興行、THE VERY BEST OF MANZAI 2+行ってきた。
去年の第1回もすごく楽しくて、でもその楽しさは露払い的役割の3組のライブメンツが渾身の漫才を見せてくれたことが大きいと感じたので、今回の私が座組したのかと思うほど好きな人ばかりの出演者の中に、ドリーマーズがいないのだけが残念だった。 OP映像で、三四郎浜口浜村と並んで名前が出たのはスパナペンチ。相変わらずあのOPはかっこいい。サンパチが一瞬だけ映るのね。


OPMCはなすなかにしとHi-Hi。上田さんは昨日酔っ払って階段から落ちて右肩を強打したため腕が上がらない状態だと。でも包帯は痒くなるから巻かないでくれと言ったそう。



トップバッターは囲碁将棋「一番売れたミュージシャン」。意外な人がトップで飛び出しかと思ったら最後までいてくれた。いごしょの妙に説得力のある屁理屈大好き! 終盤の展開が意外でびっくりした(笑)。別のネタが始まったのかと思った。


スパナペンチ「取り柄」。最初永田くんがちょっと噛んで笑いが起きちゃったけど変な感じにならずよく受けてたー。ファービーであんな沸かす人おらんわ。すごい。


浜口浜村「初心」。座高円寺の大舞台でこれ(笑)! 最後あの広い舞台のちょっとセンターからずれたところで、浜口さんとくしゃくしゃの頭の浜村さんが縦に並んでありがとうございましたって、言うのが、なんか感動的に見えて参った。


ダーリンハニー「漫才!高田馬場」。月笑で最初にこのフォーマットやったときの車掌になりたいネタ。最後の蒲田行進曲まできっちり。月笑では蒲田はこのネタ以降は使ってないけど、今日はこれがすっごく効果的で良かったー! ダーリンハニーここにありって感じで、月笑フリークとして勝手に誇らしかった。


エレファントジョン「部活」。またその後がエレジョンてのがにくいわ。エレジョンの漫才も正統派かカウンターかって言ったらカウンターなんだろうけど、東京ライブシーンに於いてはもう重鎮のような安定感安心感。


スピードワゴン「じゃんけん」。東京センターマイクで見たネタ。これすっごく良いネタだよなー。終盤がだいぶ変わってた気がする。うろ覚えなんだけど。


なすなかにし「ものまね→オリジナルゲーム」。どんなつまらなそうなゲームでも、那須さんと中西さんがやってると楽しそうに見えるマジック。にじみ出る仲の良さ……。



中MCは囲碁将棋と風藤松原の「風藤:漢字四文字ーズです」。がっつり話すのは初めてだそう。風藤さんだけ180cmないので「松原:大きな男に囲まれる気分はどう?」と三人に詰め寄られる(笑)。
いごしょは風松がTHE MANZAIでスーツ着てたのがショックだった。「風藤:(Tシャツだと)小汚く見える」。ほんとにロックが好きなんですか?と聞かれて松原さんのスイッチ入っちゃって止まらない。私が疎いんで単語が頭に入ってこなかったんだけど、風藤さんはニルヴァーナ以降だそうです。松原さんは様式美ヘビーメタルがどうこうで、メロディーがきれいなのがどうとか(ほんとに理解してないことって覚えられないな!)。風藤さんはライブハウスでダイブしてた。
いごしょはほんとに囲碁将棋部で、2人とも将棋をやってた。部長だった文田さんに、芸人を将棋の駒で例えてもらおう!と言うことになり風松は「底歩」だと。自陣の一番深いところで守ってる歩で、これを指すと「渋い手ですね」って言われるらしい。風松は嬉しそうだったけど、松原さんが何度か「金にはならないの?」と聞いていた。出世欲(笑)?
ちなみにいごしょ自身は、「早めにとられて後で出て来ると信じてる歩」。今は駒置き場にいると。
次はコント師が今日だけの漫才を披露しますーと風藤さんが言うと、ほんとに今日だけ? 念書書かせてコピーとって配りますよ!と厳しいいごしょ(笑)。


ここからコント師
ラブレターズの立ち位置は、下手塚本さん上手溜口さん。それぞれ逆の袖からTHE MANZAI方式で出てきて、クロスして立ち位置についた。衣装の打ち合わせなしで来たらふたりとも原色のカーディガンで、塚本さんが赤で溜口さんが青。「塚本:ホリプロコムじゃないですよー」。漫才は「おっぱい」。ボケとツッコミを入れ替えながら、相方の言ったことに「〜だバカ!」ってサンパチに寄って喰い気味に突っ込むスタイル。ラブレターズにとって漫才は、相方ではなく正面を向いたまま突っ込むものなんだなーって興味深かった。
コントの時は溜口さんの異常さとの対比でまともに見えてる塚本さんが、あ、やっぱりやべー人なんだわと立ってるだけでわかった。役に入ってたら見えないお人柄が見えると言うのは良い漫才の証拠。素晴らしかった!


巨匠の「デブです」「ヒゲです」「巨匠です」の掴みが秀逸過ぎてもういっぺん聞きたい。最初のツッコミでだーほんちゃんが死んじゃって……と言う、「コント師がやる漫才」と聞いて真っ先に想像するタイプの漫才……まぁコントか(笑)。でも、これこの日だけって触れ込みなのでオチを書いちゃいますが、岡野さんの〆の台詞「生まれ変わってもまた漫才やろうな!」が、おお、漫才師っぽい!と感激。「また芸人やろうな」でも「またコンビ組もうな」でもなく、普段全然やってないはずの「漫才やろうな!」なのが、一日限りとは言え漫才師としての矜持を勝手に感じてしまった。「死んでも」とか「生まれ変わっても」とか言うある種安直な切実さって、コント師より漫才師の方が口にするような気がする。まぁ私芸人交換日記大嫌いですけどね(笑)。


ダブルブッキング「漫才師はズルい」。これがもう素晴らしかった! 今日を境にダブルが漫才やり出しても全然びっくりしないクオリティ。いかに漫才師の方が有利か、ずるいかを川元さんが提示していくんだけど、最初のパンさんの「あら、川元さん、おこですね」のつっこみでもう良い漫才になると確信した。コントではパンさんも客もろとも川元さんの恐ろしさに翻弄されるけど、漫才だと川元さんの言動に明るく突っ込めるから川元さんの闇はそのままなのに悲鳴ではなく笑いが起きる!
楽屋泥棒云々のくだりで、パンさんが「川元さんもやってないですからね」と言ったら川元さんが素っぽく「ありがとう」なんて言っちゃって、可愛らしさまでもが前面に!
ネタはお人柄とゴシップの塩梅が絶妙で、ほんとに素晴らしい漫才だった。また見たいまた見たーい!


そして最後がトップリード。スーツで出てきただけで笑いが起きちゃうくらいトップリード=コントってみんなが思ってる良い空気でした。
ネタがまたすっごく素敵だったー! トップリードがトップリードをパロディしてると言うか、みんなの思うトップリードとトップリードのコントに他ならぬトップリードがツッコミを入れててたまらん。もう和賀さんの「俺お前のやる女嫌いなんだよ!」の一言だけでもチケット代にお釣りが来るわ。女装も間も伏線も、トップリードの武器で大好きで、でもKOCで伝わらなかっただけで諸刃の剣みたいに思われるのが心外だった。そう言うの全部まるっと包んで、「コント欲が強い!」とか「後半効いてくるのに!」とか2人の口から聞けたのが嬉しかったし楽しかったなぁ。
トップリードは芸人さんと言うよりコント師と言うイメージで、この数年はそれを打破しようと色んなことをしているように見えた。まぁ私は大分ライトなファンだけど。
そう言う試行錯誤が、ひとつ結実したように見えた漫才だった。武器も悩みも外野の声も、全部を舞台に開陳して笑わせた。見事な芸人魂でした。


4組終わって、コント師が勢揃いして少し話すのも粋な趣向で楽しかった! みんな尋常じゃなく緊張していて、塚本さんは出番前なのにもう滑ったみたいに頭を抱えていたと。
コント師はみんなやった方が良い!と新妻さん。ギースと、ジンカーズと……「川元:ラーメンズ」(笑)。
そもそも話を受けたのが年明けすぐぐらいで、こんな大きなところでやる物だと思わなかったと。「和賀:漫才師が漫才やるとも知らなかった」。コント師だけの企画ライブだと思ってたのかな? 塚本さん曰く、THE MANZAIの直後だから漫才師に対する憧れもあって気軽に引き受けてしまったと。
コント師は全員入り時間より30分早く来て、出の練習をしていた。みんなそれぞれ変えた方が良いんじゃないかと相談したりしたと。
パンさんは色んな漫才師に相談したがみんなテキトーで、これは一番優しいまっちゃん(松原さん)に聞くしかないと思って聞きに行ったら「姿勢だけはちゃんとしないと、だらっとしてるとただの立ち話に見えるから」という至極真っ当なアドバイスをポコパンやりながら答えたらしい(笑)。


コント師の皆さんの練習の様子はK-PROさんが
http://ameblo.jp/kprozakki/entry-11782518512.html


スーツ姿はナタリーさんが上げて下さっていてありがたい。
http://natalie.mu/owarai/news/110697


誰かが「センターマイクの前に机があったらまた違うんだけど」と言い出して、上方落語みたいなのを想像してたらパンさんが「机あったら俺ら強いぜ!」って言ったのがかっこよかった。他のみんなも口々に「長机はいい、ベッドにもなる!」とか言ったりして。そう、漫才をやることによって、漫才師への敬意はもちろん、コント師のコントへの自信やコント師としての自負が感じられたのが、この企画のすばらしさだったと思うのよ。


マシンガンズ「時事ネタ」。開口一番「楽しい時間は終わりだー!」「お前たちを蝋人形にしてやろうかー!」(笑)。時事ネタというか下ネタというか(笑)。エイトライブでもやってたネタだっけか。


三四郎、メモには「体が硬い」って書いてあるんだけどダウンタウンが出てくる漫才だったような……。


Hi-Hi「生まれ変わるなら」。上田さんが、生まれ変わったらつきあうー?って、あっけらかんとガンちゃんに聞くところが一番好き。漫才師の運命共同体っぷりって、冗談であってもこういう端々に出てくる気がする。


オジンオズボーン「15年を振り返る」。もはやだじゃれでも何でもなく、ほんとに「篠宮さんが声を張ってる」と言う事実だけがボケ! すげぇ! 漫才のひとつ究極の形なんじゃないのこれ。


磁石「医者」。初っぱなに永沢さんがネタを飛ばしたんだけど、さっさんが飛ばしたのに気づくのが早すぎる(笑)。あれさっさんが黙ってたらたぶん客席もうちょい気づかなかったよ(笑)。


風藤松原「初対面の人が苦手」。まさかこのメンツで風松が大トリとは。びっくり。やーやー立派でした。前日のエイトライブでやったときに「今年初めて1本ネタっぽい新ネタでてきたー」と思ってたらそれをさっそく。客席からの信頼が増したことによって松原さんのボケを待ってもらえてるなぁと、最近いつも思うことをこの日も。


とにかくコント師の漫才が楽しくっておもしろくって、でもライブ自体はとんでもないメンツの漫才師が揃ってるから単なる企画物に終わらないスペシャルの名にふさわしいライブでした。V-1あたりでコント師だけで漫才やるライブもそれはそれで見てみたいけど(笑)。
ライブって、見る前にお金を払う物だから、基本的には「これは絶対おもしろいだろう」と思って行くんだけど、その「絶対」が「絶対」過ぎるとかえって行く気が起きなくなる。勝手な物で、おもしろいとわかりすぎていると足を運ぶ気にならないのだ。お金を払う安心感と、足を運ばせる動機は同じじゃない。足を運ばせるのは、保障よりも、「何が起こるかわからない」と言う未知のむしろ不安に近い物の方が強い。
今回のライブは、その安心感とわくわくがどっちも最高に満たされていた。見る前から。そして見終わったら、思っていた以上に楽しかった。「おもしろい」と「楽しい」もまた別の感想。
毎年恒例になって、その時々で素晴らしい漫才師とコント師の祭典のようになって欲しいライブです。