優しい日

10周年記念公演 feat.KYE
「キタキュウマンRESTARTED」
1/13(土) あるあるCtiy 12:00/16:00

物語の内容ではなく興行そのものについての感想ですが、内容に触れていないことはないのでネタバレです。
再演の可能性が示唆されているので、自分の目で見るまでは内容を知りたくない人は読まないでください。

フライヤーに「この日新発売のグッズの販売もあります。皆さん是非楽しい思い出と一緒にお買い求めくださいませ。」

「本公演は暴力的シーンやショッキングな表現が含まれます。開覧は中学生以上を推奨致します。小学6年生以下のお子様の開覧は自己責任と致します。」
が並んで書かれているのを見た時は、大丈夫⁉︎ ほんとに楽しい思い出と共に帰れる⁉︎と思った。正直。滝さんはサプライズのうまい人だ。

「ショッキングな表現」と「RESTARTED」に、ガワの代替わりではと思った人が多かったのではないかと思う。私はもうXのファンダムを離れてしまっているので、そういう会話を見たとかではないのだけど、私が考えるようなことは皆考えると思うので。
で、もう一つ嬉しくない方に想像を膨らませると、メタルくんいなくなるんじゃないといいなとも思った。
予想と言うほど根拠のある想像ではなく、メタルくんのガワの方が傷んでるんじゃないかというのと、あとメタルくんはちゃんとした社会人なのでどのような都合があるかわからないしなぁという。
でもまぁ不安に思っても仕方ないし、出されたものを見るだけだと、1部は撮影禁止のためファインダーも通さず見た。

いやもう、全部お見通しの上やられた、そしてフライヤーの不穏さも全て前振りだったかと思うほどに、想像し得る中で一番優しい興行だった。

「スーツが限界だ」と何度も言うことと、唯一の犠牲がメタルくんであるということは、脚本書いてる時点で客が代替わりだけでなく最悪(メタルくん引退)の予想をすることまで、完全に読んでいる。
それ全部「やっぱりそうなのか……」と絶望させておいて、リセットボタン押すまでの決断は早かった。ちっとも迷わなかった。あそこ溜めなかったのは、客の感情を翻弄することよりも、1の犠牲である弟を取り戻す信念を優先していて、ああ優しいなと思った。弟を思う気持ちと、必要以上には観客をハラハラさせないこと、両方が。

新フォームが増えてガワも変わらずメタルくんも一緒で、これからさっそく発売しますってCLASS-Kのグッズをお出しされて、「楽しい思い出と一緒にお買い求め」てしまった。もう本当に全部手のひらの上だった。

ガワは消耗品だと理解しているので、ガワの代替わりはいいとか悪いとかでなく、必要なタイミングで起きることではあるともわかっているのだけど、愛着とか情とか思い出が邪魔をする。でもその感情があるから追いかけてまで見たくなる。今回がそのタイミングでなかったとしても、この先に起きることではあるかもしれない。
でもこの日のように、全部わかって逆手にとって、必要以上には傷つけず、最後は楽しく帰してくれたこの興行主なら、その時が来てもちゃんと目撃できるかなと思った。

ついでに時代や芸術の種類を問わず、信頼をもって会いに来てくれた人にいきなりビンタを食らわしたり皮肉を言って悦に入るような作品たちに、この世のありったけの不幸が降り注ぎますように。
小沢健二犬は吠えるがキャラバンは進む」ライナーノーツより

初めてこの文章を読んだ1993年から、私が興行に望むことはずっと変わらない。10何年か後にこの文章を書いた本人にまさにこの「ビンタを食らわ」されるようなライブを見せられることになるのだけどそれは置いといて、信頼を持って時間とお金を費やして会いに来た人を、粗末にせず来た時よりも嬉しい感情で帰してくれること。
昨日はすごく楽しい気持ちで会場を後にした。