2013年最後の月笑

太田プロライブ「月笑」2013クライマックスシリーズ
12/9 明治安田生命ホール 18:30


もはや相当おぼろげな記憶ですが年を越す前に書いておかないと、と書いてからさらに1ヶ月以上が経過しました。日付詐称で上げます。(2014/1/29)


前説はくじらさん。袖から芸人さんの笑い声が聞こえたり、後ろをやさしい雨が通り過ぎたり、お客さんからもいじられたりで賑々しい前説でした。TMRのネタは若干悲鳴が上がってました。
MCは恒例彦摩呂さんに加えてつるの剛士さんまで。去年はプレゼンターとして最後だけの出演だったので、今年はがっつり見たいと司会をやってくれたんだとか。去年つるのさんが出て来た時、芸人さんとすごく仲良さそうですっごく良い雰囲気だったので嬉しい!「ブラックパイナー初めて会った時高校生だったのに!」とか仰ってた。
開演前に当日券の列が見たことないくらい長かったんだけどつるのさんファンだったのかなー。

ナインボール

「沖縄のサッカーを盛り上げたい」。先月の月笑のバスケの監督と同じ構造のネタで、それは良いにしても決めどころのボケが全部一緒ってのはちょっとまずくないか。風松ファンに言われたくないかもしれないが、もうちょっとわからないようにやった方が……。私の勘違いでなければ沖縄のサッカーを盛り上げるために日本代表の監督を呼ぶって設定だったと思うんだけど、それだと後の展開が全部おかしいから頭にずっとはてなを浮かべながら見てしまった。バスケの監督は、沖縄のバスケが強いから沖縄の監督を日本代表にするって設定だったから、真逆だと思うんだけど。

FREE MONKEY

「トリオの例え」

メンソールライト

「子供にこうなってほしい」。明治安田に高座作ったー! こういうの見るとなんだかんだで太田は芸人さんに優しいよなぁと思う。着物着て、がっつり落語スタイル!

神宮寺しし丸

「かっこ悪いふられ方」。いつもの長回しひとりコントと思って見てたらまさかのショートコント集だった。ブリッジが大江千里に乗せた真顔のおじぎってすげぇ。

サイクロンZ

「メンタリムズムズ」。むずがゆさが残る中途半端な何かをそのまま演目にしてしまうと言う。おもしろかった!「茶々を入れられるマジック」「勢いだけのマジック」等々を経てたどり着いた前人未到の新たな地平!

松村邦洋

物まね。アウトレイジとか半沢とか。いつかテレビで聞いた完成度2割でおろしちゃうって言う話、最後らへんであれを目の当たりにした。ああここがひとつの最先端かと思った。松村さん凄かったな。初めて、ネタの内容関係なくアウトな人なんだとわかった。目で。物まねの間の目が狂気の目だった。表情やしぐさは誰かに似せようとしているのに、目だけは何も映していない洞のようで心底怖かった。


ここでセミファイナル対決

ダーリンハニー

「漫才!高田馬場」。こないだのナガシのツイートで漫才の後に雨だれが入ると知る。「決戦!お笑い有楽城」みたいなノリなのかしら。違うか。
流行語や改名するとしたら?について、いつも通り鉄道満載で。文句なしにおもしろかった。

アルコ&ピース

コント「ケンタとじいちゃん」。もうとにかく平子さんのじいちゃんの演技が素晴らしい。がっつりしたコント久々に見たなぁ。


ここから再びネタ

やさしい雨

「クリスマス」。松崎さんの真っ赤なPコートが可愛いなぁと思ってたら、吉本さんが着て来たベージュのコートが輪をかけて可愛かった。

コブラナッツ

肉食系女子」。冬服だーと思って見てたら大オチが!「今太田プロで一番輝いてるのは私たちよ!」と高らかに宣言。気持ちいい。

アンバランス

「ボケとツッコミを入れ替える」。最初にさらっとボケツッコミを入れ替えることにしましてんとだけ言ってふっつーにネタをするもんだから、え、これ設定なの? ほんとに変えたの?と本気でわからないままネタを見てました。何がすごいって入れ替えてもちゃんとしてるんだ漫才が。
これは完全に憶測だから大外れかもしれないんだけど、このネタは見ていて、作家さんが作ったか、作家さんが多くを担う形で一緒に作ったのかなと思いました。ふたりが役割を演じている感じがするんだけど、でもそれがちっとも嫌な感じでも上滑りしている感じでもない。昔の、漫才師とともに漫才作家の名前が出ていた頃の漫才ってこんな感じだったんじゃないかしら。ネタの「こういうことがやりたい」と言うことを、漫才師がびたりと表現している強さを感じました。人の言葉を自分の言葉として表現できたとき、自分の言葉で話す強さのもうひとつ奥にあるものが見える気がしました。
先に言いますとこの後見る風松のネタが馬場さん作の「雨男」で、あのネタは実に風松らしいけど、逆に風松らしすぎて人のネタを演じている感じも同時にあるんですね。この日はアンバランスと風松のネタを同時に見て、図らずも人のネタを演じることについて思いを至しました。必ずしも、いかにもな物の方が演じやすいわけではない。そしてなにより、作ったネタをやることと、人のネタを表現する技量は別のものだと。

アイデンティティ

「ルパンvsコナン」。物まねのクオリティが高い。アイデンティティのネタは、こういうとことかディティールがとにかく正確でひっかかりなく見られるところがほんとにえらいと思います。結構大変なことだと思う。

タイムマシーン3号

「デブのテーマパーク」。タイムの漫才は「立て板に水」と言う表現がぴったりくる。アイデンのディティールにも通じるけど、よどみなくすっと通り過ぎてしまえると言うことを支える技量のすごさを感じさせもしないと言うのがほんとうにすごい。


ここでセミファイナルの発表。ダーリンハニーの勝ち。

360°モンキーズ

ショートコント

ブラックパイナーSOS

「幸せ?」

マシンガンズ

ケンカ漫才。売れなかった売れなかったと、KAKOKUのこととか今年の仕事の話。ある意味ものすごい鮮度の時事ネタだよなぁ。そんで調理する熱量がまたすごい。

新宿カウボーイ

「なぞなぞ」。毎年恒例客席後方から登場したかねきよさんに握手して頂いたんですが、去年は手のひらが氷のような冷たかったんですが今年はそこまでではありませんでした。冷たくはあったけど。

インスタントジョンソン

「合格後の部屋探し」。インジョンらしい良いコント! インジョンのネタを見てると、根本のところがズレてる人との対話の絶望ってほんとに純度100%の絶望だなって思う。

火災報知機

「相方の嫌なところ」。サンパチ出て来たからあれっと思ったらまさかの漫才! 相方の話ではあるけど、持ち上げる後輩と嬉しくなっちゃう先輩と言ういつものコントの感じをそのままお人柄に乗せて、良い漫才だった! ブラパイと言い火災と言い、これくらいの芸歴のある人は自分たちの個性をわかりやすく表現する技術に長けているから漫才が映えますね。で、アンバランスくらいまで行くとまた人のを演じることができるようになるのかしら。

トップリード

「じゃんけん夫婦」。月笑でやるとは思わなかった!


この時点で20:45。ここからファイナル。

ダーリンハニー

「漫才!高田馬場」。鉄道ニュースに始まって、「桃太郎」をリメイクしたから聞いてほしいと言うネタ。
このフォーマットは月笑でおろされたものなら全部見ているのですが、最初2回は鉄道あるあるっぽいネタで、同じパターンで失速したかと思いきや3回目から職業をのっけ初めてもう手のつけられない面白さになりました。車掌がすでに職業なのに、その人たちが「弁護士になりたい」とか言い出すんだもの。普通の漫才コントが「俺これやりたいからお前これやって」からコントに入るのに対し、高田馬場は出て来た時からコントの中にいて、「これやりたい」と言う職業を車掌としてボケ続ける。それだけでも笑いがとれるはずの鉄道あるあるは、もう前提なのです。
その前提の鉄道あるあるは、しかし今まで容赦されてたんだとこのネタを見てわかりました。なにしろ言ってることの半分がわからない! たぶんなんか電車ってことくらいしかわからない! でもおもしろい!
月笑のクライマックスシリーズは、20組中セミファイナルで勝った組だけが2ネタやらなければならないので、最初のネタより失速したら俄然不利なのです。両方高田馬場だったら飽きられないかだけが不安要素だなーなどと思っていたのですが、完全にその逆、1ネタ目を超えたことによって2ネタ目の受け方が爆発的なことに。これはもうよっぽどでないかぎりダリハニかなーと私ですら思いました。

風藤松原

「雨男」。まさかの人が作ったネタでファイナルって! ていうかTHE MANZAI前に人が作ったネタって! いやはや最後まで読めない食えない人たちだと思いました。人の名前が出るところを初めて松原さんがちゃんと言えてたんだけど、やっぱりどうしても人の思う風藤松原を演じてる感じがあって、漫才の重心が高い感じというか……うまく言えないんだけど。


優勝はダーリンハニー。結構票差がついていたような。プレゼンターとしてAKBの北原さんがいらして、「私も太田プロなんだなって思いました」と仰っていました。なにか通じるものがあったの!?
ダーリンハニーの優勝が決まってから風松はひとつも触れられず(笑)、全部の授与が終わってから風藤さんが「優勝しないとこんなにほっとかれるんですね!」と前に出てきて、この悔しさは15日にぶつけます!みたいなことを言ったらやんやの拍手が起きました。温かい。松原さんもついて出てきて一言、「宝石まみれや〜」。彦摩呂さんに「宝石箱や!」と訂正され、風藤さんに後ろに連れ戻されていました(笑)。


年に一度のことですが、このクライマックスシリーズのエンディングで月笑芸人さん以外の太田プロの面々や日刊スポーツのお偉いさんが並んでいるのを見ると、賑々しさに心が浮き立ちます。なんなんでしょうね、これ。終わった後に思わず「クライマックスシリーズは誰が優勝しても太田プロだから嬉しい」って事務所ライブの概念を覆すようなことを口走ってたんですけど、でもそれが実感で。
つるのさんもタレントとしてはよく知らないんですが、去年に引き続き今年も「高松太ったねー」なんて言ってるところを見るとやっぱり好きになっちゃいますねぇ。大企業なのに中の人たちは仲よさそうと言うか、ファミリー感が強く見えます。太田って。
太田プロの芸人さんは事務所の悪口を言わないので有名ですが、その一端をクライマックスシリーズでは垣間見るような気がします。ものすごい大御所も、女優さんも、アイドルも、太田にはいて、太田の芸人さんはそれを地続きに感じて仕事をしてらっしゃるんだろうなーと。私みたいに特定の層の芸人さんしか見ない者が外から感じるよりずっと強く。


2013年は風邪でまさかの皆勤ならずでしたがこれからも月笑を最優先にするのは変わらないだろうなと思ったクライマックスシリーズでした。さーダーリンハニーの単独だー! 風松はトークライブやってね!