バスツアーの思い出

ものっそい今更なんですが、2月17日に太田プロ主催のバスツアーに行ってきました。
今となってはもう、「夢みたいに楽しかったなぁ」という記憶が霞の向こうにおぼろげに浮かんでいるばかりで、最近急に暖かいので記憶が補正されて、まるで春のうららかな日の思い出みたいになってるんですけど、実際は天気が良くて寒い日でした。


これは日溜まりの中の羊さんですね。



東京(ほとんど有楽町)に集合して、バスに乗って鹿島神宮に行って、成田ゆめ牧場に行って、東京に帰るというツアーでした。


私はお笑いを見るようになる前は骨の髄までジャニオタでした。
アイドルと芸人さん、どちらも尊敬する存在ですが、アイドルは「存在」そのものが商品である人、芸人さんは「芸」が商品である人、と言う区別があります。
アイドルも「歌」や「踊り」や「演技」や「バラエティの技術」を売る人ではありますが、そう言うのではなくあくまでファンにとってだけ――例えばアイドルが、客入れが済んだ開演前のステージに場当たりに出てきたりしたら(そんなことないけど)それはキャーって言って良いと思うのです。アイドルだから。存在してるだけでキャーだから。
芸人さんが、同じように舞台に出てきても、ワーとかキャーは言わない、内心おおって思っても言わない、彼らはそのとき芸をしてないから。そう言うことになっていると思っています。


なので、芸人さんのバスツアーってテンションをどう持っていって良いのかわからない……バスツアーって存在そのものがキャーの人のお仕事ではないだろうか……と、集合場所に行くまで、いやバスに乗ってもまだどうなんだろうと思っていたのですが。
全くの杞憂でした。才能とか技術以外の部分の、芸人さんの別格さを目の当たりにした1日でした。あの長時間、ただただ目の前の人を楽しませ、笑わせることが「普通」って、やっぱりあの人たちはどこか常軌を逸している。
バスツアーの間中、太田の芸人さんたちは、もうずーっとずーっと楽しませてくれました。
バスに乗ってる間からずっと笑わせて、バスを降りたら降りたで、見てる人がふたりしかいなくてもすぐコントを始めるし、他愛ない話もしてくれたり、ネタについてのちょっと真剣な話にも答えてくれたり。
サイクロンZさんに、名前を聞かれたので、なんでだろう?って思っていたら、なんと参加者全員(71名)の名前を覚えようとしていたんだそうで。なんかもうびっくりするくらいみんなまじめで真摯で、思うことと言ったら「なんていい人たちなんだろう」という極シンプルなことひとつだけでした。


「サービス精神」というものを、初めて目の当たりにしました。私はほんとうに鈍いので、なんでも生のまま出してもらわないとわからない。
ライブだとやっぱりどこか勝負の場みたいな側面もあるので、わからないのですが、別に笑わせても笑わせなくてもどこの評価が上がるわけでもなければギャラも変わらない誰が褒めてくれるわけでもないであろう(お目付役は写真撮る役のマネージャーさんがひとりしかいなかった)ツアーの間中、なんでこんな全力でできるんだろうって思った時、「サービス精神」って、これのことかと初めてわかったのでした。


「才能」というものについて考える時に、いつも思い出す漫画があります。

難波鉦異本 第1巻 (斬鬼コレクションワイド版コミックス)

難波鉦異本 第1巻 (斬鬼コレクションワイド版コミックス)

間違いなく昼下がりの牧場で思い出す漫画じゃないんですけど、その中の才能についての一節。

才あるだけの奴なら意外にゴロゴロおる
けど三絃の才ある奴が
三絃はじめるとはかぎらんし…
はじめたとて
ええ師匠
ええ道具
ええ客に
巡り合うとは限らん
巡り合うても精進するとはまた限らん

たぶん、おもしろいことを思いつく人は、星の数ほどいて
でもそれを、人前で口に出す人は思いつく人よりずっと少なくて
さらにそれを名前と顔を出して仕事にしようとする人はずっとずっと少なくて
その中で頭角を現す人はもうほとんどいないくらいの数になって
それが私の見ている芸人さんなんじゃないかと。


おもしろいことを思いついても、それが見ている人に伝わらないと、何の意味もない。
おもしろいことを伝えるには、伝えるための技術が必要で、「おもしろいことを思いつく人」から「芸人」になった人はその技術も磨かないといけない。
その技術を磨いて磨いて、みんなが研ぎ澄ませていってそれからさらにぬきんでて伝えようと思った時に、最後に見ている人にリーチする差は、結局「伝えたい!」って言う、気持ちひとつなんじゃないかと。
おもしろいことを思いついて、それを伝える努力を惜しまない人だけがおもしろいことを伝えられる。おもしろくってもだまっていたらわからない。
見ている方は、笑う時、それを届けるための努力や熱量も一緒に受け取る。目に見えなくても意識にのぼらなくても。
この日は、普段そうやって無意識のうちに感じていることを目の当たりにしました。ああこんなに絶え間なく、ずっとおもしろがらせてくれていたのか。技術や打算を超えた、サービス精神の塊みたいな「こういう人たち」がいることが驚きでした。


芸人さんにとって「人柄の良さ」は、「ネタのおもしろさ」と全く分けて考えられたり、時として対立するものとして(おもしろくないのに人柄で売れてるんじゃない?って言われたり、)考えられたりするけど、なんかもう全然そんなんじゃなかった。
おもしろさを伝えるためには結局最後には「目の前の人を笑わせたい」っていう熱が必要で、それはその人そのものから分けて考えられるような事じゃあない。おもしろいことが客にリーチするとき、その人にまつわる全てがその一助になっている。


テレビに出たりするようになると、あれはまたものすごい人数でのチームプレーなので、チームでやっていく上での人柄の良さが必要になってくるんだろうと思います。とはいえ、私はブラウン管の向こう側(って今はもう言わないだろうか)のことはわからないので、あくまで目の前で見ることの出来る芸人さんのおもしろさが、どうして客に届くんだろう?って考えた時の話ですが。


もちろんこの日は特別で、客側も太田の皆さん大好きな人しかいないから、伝わる伝わる。
最後の最後、バスを降りる前のご挨拶で、かねきよさんがサイコロ振って「6」を出した時のわぁっという沸き方はほとんど感動的でした。出ないんですよねぇ、「6」は! みんながみんな、その価値をわかってることがまた、嬉しかったです。


さてせっかくなのでいくつか写真を載っけて終わりにします。羊さんが多いのは気のせいです。実際は200枚撮った内の3分の1が羊さんでした。


2台のバスに分乗したので、芸人さんも半々にわかれるのですが、最初に乗り込まない方の芸人さんも顔を出してご挨拶してくれました。



これは顔を出しに来た風松。
私はいまだに、芸人さんの、もう立派な大人がつねにふたりセットで仕事をするということになんとなくほほえましさを感じてしまうので、この日も、ふたり揃ってご挨拶にみえた風松に、ああ、なんか可愛いなぁと思いました。あたりまえなんですけど。コンビなんだから。


最初にバスに乗ってくれたのはアルコ&ピースマシンガンズ・サイクロンZ。
平子さんと西堀さんがサイクロンさんを追い込む追い込む(笑)。




この松原さんは何をしてるかって言うと、私物プレゼントで出された風藤さんのTシャツを畳んでいるのです。




ヤギと風藤さん、和みすぎてどうしよう。




楽しさでたえこさんも笑うというものです。




ヒルのレースでの躍動感あふれる一枚。




ヒルのレースのコース内で、全力で営業ネタ中のアルピ。最近営業ネタブームですね。




丸の内に着いて、バスを降りる時に芸人さんがハイタッチで送り出してくれました。
その後、バスで帰る芸人さんを今度はこっちがお見送り。窓際に一列に座ってくれた芸人さんたちは、この後なぜか敬礼で去っていきました。




我が愛する東京駅はこの日もきれいでした。



こっちを見てもらって撮ってもらった写真もたくさんあるのですが、それは独り占めなのですよふふふ。


あ、この羊さんちょうかわいくないですか。