THE MANZAI 2011 所感

Hi-Hiの二本目が終わったときに、もう心は穏やかだった。誰が優勝しても、売れるのはHi-Hiだ。


風藤松原が本戦サーキットに出られなくなって、もう私にとっては人ごとの大会だなぁと思っていた。
さらに、事前番組の「おかっちM.C.」が、THE MANZAI応援番組と銘打ちながら、実際は新人アナの売り込みだったり、認定漫才師を粗末に扱うバラエティだったので、これはもう決勝には期待しない方が良いと思った。そもそも自分がめちゃイケを受け付けないことを思い出した。


ところが12/10の挑戦会が、思わぬ楽しい番組だった。すべての認定漫才師の好感度が上がるような、ていねいな作りで、それと、公式ツイッター(通称ザマンザちゃん)からは真摯な態度が見て取れ、どこを信じればいいのか判断がつかなかった。


この挑戦会で、風藤松原がワラテンシステムのテストとして、ネタを披露した。完全に、辞退せざるを得なかった風松への思いやりによってなされたことだったようだ。賞レースに、こんな人情があるのか。
このとき風藤さんが、崩れに崩れた。私は見ていて、息ができなくなりそうだった。結果おもしろかったという人がたくさんいたが、前半受けていただけに、いちばんおもしろいところを見て欲しかったという欲があった。


13日のお笑い青田買いに行った。新妻さんが挑戦会を見ていたという話をされる度、差し込まれるような気分がした。でも、EDで、風藤さんがハマカーン


生放送には魔物がいるよ!


と言った。そうしたらすかさず和賀さんが、


俺も椅子から転げ落ちましたから


と言った。
この時始めて、ネタを飛ばすのも椅子から転げ落ちるのも、舞台に立てたからこそできたことだと思った。
ハマカーンはもう、浜谷さんの顔つきが完全にテレビに出る人のそれになっていた。決勝に進めなくて悔しがっていた流れ星も、THE MANZAI用のネタを練って練って、認定漫才師までのぼった人たちだった。
そこにいる人たちみんなが、今年で確かに、これまでに超えられなかった線を超えた人たちだった。


Hi-Hiの一本目のネタが終わったとき、思わず知らず、涙がこぼれた。良かったね、良かったねと嗚咽した。涙もそんな言葉も、出ると思っていなかった。
夏前のHi-Hiを知らない。FKD以前はもっと知らない。あっという間に好きになった人たちに、こんなに思い入れているなんて自分でも知らなかった。
Hi-Hiが売れる。二本目をいつもどおりにやりさえすれば、Hi-Hiの魅力は絶対伝わる。果たして、Hi-Hiは二本目もほんとうに良い漫才をした。Hi-Hiは、ずっと超えられなかった何かを、あまりにも大きな歩幅で踏み越えた。


始まる前に願ったことは、ただただ、みんな、いつも通りの自分たちの良さが出る、らしい漫才をしてくれますようにということだけだった。力を出し切れず、悔いの残るようなことになったり、まして損をしたりしないようにとそれだけだった。自分らしいネタをやることが、そのまま漫才師の個性やよいところをひろく伝えることになる。そうすればきっと仕事は増える。


終わってみて、ほんとうに楽しい番組だった。もちろん視聴者として改善して欲しい点は多々あるけれど、それは来年も開催を強く望んだ上でのことだ。来年もぜひ見たい。新たな人たちが、きっかけをつかむ瞬間を見たい。一組でも多くの漫才師が、お笑いだけで食べていけるように。
16組もの漫才師が、自分たちのよいところをひろくひろくアピールすることができた。さぁここから誰を選ぶんだと言わんばかりだった。
きよし師匠も言っていたけど、どのコンビも素敵だった。技術以上に、魅力的なコンビばかりだった。お互いと、お互いが面白いと思うものを信じ切ってここまできた人たちの間にある確かなものは、画面を通しても伝わった。


今年はライブとテレビの違いを多く考える年だった。ライブだけで良いんじゃないのとも思った。でも、好きな芸人さんが「テレビに出たい、売れたい」というならば私はそれを是とする。
年の瀬に、Hi-Hiがすべての理屈を凌駕する熱量と愛嬌と楽しさで、ライブとテレビの垣根を蹴倒してくれた。
大好きな人たちが、おもしろいところを、多くの人と一緒に見られた。それはこんなにも嬉しくて楽しいことだった。そんな単純なことを改めて教えてくれた。