可愛い娘

トップリード初単独ライブ「イッピキムスメ」具体的なネタに(なるべく)触れない感想。


とにかく可愛いライブだった。
鬼ヶ島の野田さんが「あの二人はかわいい」とツイートしてらしたけど、すばらしく的を射たひとことだ。
何がどう可愛いとかではなく、新妻さんの女装は確かに可愛いけど(笑)、なんか全体の印象が、見終わった後の幸せでうきうきする気持ちが、可愛いものを見た後のそれだ。
きれいとか、かっこいいとか、シュッとしてるとか、良い印象というのはたくさんあるけど、私は、人を動かすもっとも強いちからは「可愛い」だと思っている。
「可愛い」は壮絶に人を動かす。可愛いものを見るためなら人は遠くからでも足を運ぶ。個人的には、きれいなものをみるためなら本州止まりだけど可愛いもののためなら沖縄北海道までいける。


この間千葉市美術館で若冲展をやったとき、市の美術館では破格の人出だった。若冲を見たい人はたくさんいる。それは、若冲の絵がどこか漫画に通じる愛嬌のある可愛い絵だからだと思う。ただきれいに佇んでるだけではなく、もっと積極的に、心を楽しい方向に動かす力。それが「可愛い」。


私が最初にトップリードを知ったネタは、「こんにちは赤ちゃん」だった。オチのどんでん返しにびっくりして、天才だと思った。
トップリードを見る機会は、月笑が一番多いし、基本、月笑で下ろしたネタを他のライブでも見る。伏線をきれいに回収する、意表をつくオチが多かった。最初の印象と同じく。
アンケートに左右されない単独ライブで、そればかりではないのがわかった。伏線の回収も、まとまった構成も、トップリードらしいけど、それ以上に、全編を貫いていたのは可愛さだ。どのネタも見た後必ず良い気持ちになった。


トップリードのコントはすべて可愛い。愛嬌があって、登場人物の二人がたいてい仲が良い。仲が良い以上に、お互いにお互いのことを大事にしているのが見ていてわかる。ひとりぼっちで悲しいコントは一つもなかった。今回のライブでは幼なじみの設定が散見したが、お二人の実際の関係によるものだろう。
どうなんだろうな、劇中の絵本に出てくる「ピョコがいてくれたからがんばれた、ひとりぼっちじゃくじけていた」というケロンを、そのままトップリードに置き換えるのは短絡的すぎるのだろうけど。


実は私は「コントなんだけどいい話」がひじょーに苦手で、最後になって全部好転してみんなが悟って理解し合ってご都合主義でめでたしめでたしってのが気恥ずかしくて正視できない。「進研ゼミの小冊子かハーレクインか! ストレートプレイでやってくれコントでやるな! なんで最後だけ笑いなしでオッケーなんだ!」って思ってしまうんだけど、一見いい話のトップリードのコントはそれにあたらない。わざとらしさがないせいか、素直にほっこりしてしまう。そして最後まで笑いを忘れない。このライブでも、EDでいい話になりそうになったときに一言で笑いに引き戻す和賀さんのちからがすごかった。
可愛くって愛嬌があって、その上確かな演技力がふたりを裏打ちしてるからどんな人物を演じてもやっぱり可愛くってでもクサくない。新妻さんの華のある演技は人目を引くし、それにかき消されるどころか支える和賀さんの演技は硬軟緩急自由自在だ。始まってすぐ引き込まれて、登場人物に思い入れて、彼らが不幸にならないことを喜ぶ。どのコントも見終わった後笑っている。面白いだけじゃなく、楽しくて、幸せで。


トップリードのコントは可愛い。可愛いは人の足を動かす。人の心も動かす。どんな遠くから来た人でもぜったいに幸せにできるすばらしいコント師。トップリードは可愛い。