好きな漫才師・好きな漫才

K-PRO一週間ぶっ通し興行四日目「K-PROネタカーニバル―本ネタ&カバーネタ―」
5/25(月)19:00 新宿バティオス


ネタ前の映像で風松がポイズンをやると出たときにカチンと固まってしまった。ポイズンのネタをやる風松が、風松のネタをやる風松より好きだったらどうしようと思ったのだ。結果的にはそうではなかったのだけど、あれが「冬の音」ではなく「巨人の入り方」だったらやばかったんじゃないかと終わった今も少し思っている。


前に馬場さんが言っていた「心で笑う」「頭で笑う」「腹で笑う」の括りで言うと、私は風松を見るとき心と頭、それも心多めで笑っている。そして私の「腹で笑う」の筆頭がポイズンとエレジョン。


正直なところ、「腹で笑う」が一番強いと思う。本能に訴える笑いと言うか、理屈抜きと言うか。でも私がポイズンの担当にならず風松を見続けているのは、風松の漫才が好きだからで、「好き」は心に属する。もちろんおもしろいから好きになったのだけど、好きになったからおもしろかったり興味深かったりする部分は必ず出てくる。ひいき目と言ってしまえばそれまでだけど、この「好き」と言うバイアスがあるからこそお笑いに限らずエンタテイメントと言うのは絶対値では測れない。


一番好きな漫才師が、一番笑う他人のネタをやって、それが一番好きだったらたぶんもう風松を見続けられないだろうと、稲妻のような予感に打たれて、映像が出てから漫才が始まるまでの数秒間固まっていた。動けないのに逃げた方がいいのかと思った。始まってしまえば風藤さんのヅラに笑い、見たことない機敏な動きに笑い、松原さんのままの松原さんに笑い、阿部ちゃんの奇怪さと吉田さんの突き放しぶりを再確認して、大いに笑って終わった。
ポイズンのネタで腹から笑うのはポイズンがやるからだし、風松のネタをやる風松が一番好きだわと、至極当然のことを思った。杞憂だった。終わってしまえばね。


でも好きって気持ちは張り詰めている分すぐに翻るから、長く好きでいられるのは奇跡的な偶然の積み重ねだってこともわかっている。いつどこでどんな些細なきっかけで、見ることができなくなってしまうのか。昨日は出演者全組より好きになって終わった。とても良いライブだった。