選ばなかったこと

〜K-PRO10周年一週間ぶっ通し興行四日目〜
『裏漫才5・コント5―漫才師のコント、コント師の漫才―』


5/24 新宿劇場バティオス 19:00



毎度必ず盛り上がる漫才5・コント5、しかも今回はVERY BESTシリーズで好評だった漫才師とコント師のチェンジバージョンで全編! これは行く! と行列以外では唯一風藤松原関係なくチケットをとった公演。もうネタチェンジとかカバーとか大好きで。


漫才師がコントを、コント師が漫才をするのがこんなに好きなのは、それがそれぞれの選ばなかったことだからだ。本当に書きたいことが行間にあるように、本当に言いたいことは口をつぐんだことの中にあるように、選ばなかったことをすることによって、鈍い私の目にもそれぞれの職業への誇りや技術や、選ばなかったことへの敬意が露わになる。それを見に行くのが本当に好き。


例えば


2月の「THE VERY BEST OF MANZAI 2+」の時は、パンさんが松原さんにアドバイスを求めたら「姿勢だけはちゃんとしないと、だらっとしてるとただの立ち話に見えるから」と言うアドバイスを(ポコパンやりながら)してくれたと話していた。同じ時にパンさんは、「机あったら俺ら強いぜ!」っと言っていた。


この日は、モニターでコント師の漫才姿を見た漫才師たちが「立ち位置が遠い!」とだめ出しをしていたそう。


トップリードはファミレスで動きなく口頭でネタを合わせた後実際動いてみて、お互いに思ってた玄関の位置が違うことがある。テレビこっちなの? 俺こっちだと思ってた、など。「新妻:そこから模様替えがはじまるんですよ!」


コントをやった永沢さんは、衣装のアロハに皺が寄っていたのが気になったので、新妻さんに「皺多い?」と聞いたら「何日目の設定ですか?」と返されたと言っていた。どよめく客席と、「コント師ってそう言うこと気にするんだ……!」と感心する漫才師一同。


などなど。


いつも漫才師が漫才を、コント師がコントをやるところを見て、ああかっこいいな、素敵だなって思うことの、正体の片鱗を見るような気がする。実際はもっともっとたくさんの、それこそそれまでの人生の時間分全部であの数分間の芸を作り上げているんだろうけれど。


漫才師ジンカーズのロック担当・馬場さんの手がずっと震えていた。無関心担当の樋口さんはずっとひょうひょうと馬場さんをいなしたり泳がしたりしていた。同じ大きさのドットのネクタイをしめるかわいらしさ。漫才であろうとコントであろうと、決して変わらないふたりの関係を見るのもまた醍醐味。