ホスト

〜K-PRO10周年一週間ぶっ通し興行六日目〜
『FKD48 TALK LIVE―悪戦苦闘―』


5/26 座・高円寺2 19:00



座・高円寺トークってどうやるんだろうと思っていたら、広いステージを活かした企画ライブだった。


今回はトークライブと銘打たれていたけど会場が広いせいか、恒例のスーツ勢揃いで「私たち! FKD48です!」をやってくれた。
FKDが始まってもう3年も経つのかと思うと白目を剥きそうだけど(自分の年齢的に)、毎回行くたびにスーツ勢揃いの姿に新鮮に感動できる。心底かっこいいと思う。姿もだけど、スーツで出迎えようと思ってくれる、その心意気が。
芸人さんは、身ひとつと相方さんさえいれば仕事が出来る人たちだから、極論、服装なんてどうでもいいと言えばいい。
でも、漫才師がスーツで現れたらそれだけで漫才の受け取り方が変わるように、彼らがどんな心構えで芸を披露しようとしているか、と言うことをわかりやすく伝えてくれるのが衣装で、それは見る姿勢に少なからず影響する。
前に黒田さんがスーツを忘れたときに本気で怒ったというエピソードを引くまでもなく、OPのスーツはリーダー永沢さんの指示で、永沢さんが率いていなければFKDはこういうおもてなしをする集団ではなかっただろう。


いつだったかのトークライブで、リハーサルをちゃんとしないと永沢が怒るんだよーと誰かが言った事があった。それを受けて、永沢さんが言い放った言葉が忘れられない。

リハーサルをしない事で損をするのはお前らじゃない!
お客様だ!

なにがびっくりしたって「お客様」って言ったこと。「客」でも「お客さん」でもなく、「お客様」。芸人さんが。
デパートの店員さんに求めるような事を芸人さんに求めている訳じゃないし、大体の芸人さんにこっちの常識が通じない事も知っている。
でも、あの一言で、私は永沢さんの客席への対峙の仕方と提供するエンタテイメントに全幅の信頼を置いたんだった。


25日のトークライブで「これ、気づいた人いますかね?」と言いながら児島さんが教えてくれたのだけど、名場面として紹介された「FKD48全員集合」のオチに、実は永沢さんはいなかった。
本当は全員舞台上で「ななめ45°!」をやらなければいけないのに、永沢さんは舞台袖からにこにこしながらその光景を眺めていたんだそう。それを見て児島さんは、「永沢さん、儚いなぁ……」と思ったと言っていた。


自分の作るエンタテイメントを観客として楽しめる人をいつも信頼してしまう。でも、監督ができる人は演者でなくなってしまうんじゃないか、とか、客観的に見られる人はその渦中に居続けられるのか、とか、不安もある。それが児島さんの持った「儚い」という印象と同じことかはわからないけれど。
いつだって盤石におもしろいFKDが、実は永沢さんのおもてなしの心でふわりと包まれた崩れやすい砂糖菓子のようなものだって、笑いながらも忘れずにいたい。


お笑いナタリー|ワガと雪の女王がオープニング「FKD48 TALK LIVE」