ドゲンジャーズナイスバディ第11話

nico.ms

今週もおもしろかった……もう「おもしろかった」「すごかった」しか出てこない。しかしその「すごかった」が「脚本すごかった」「お芝居すごかった」「演出すごかった」に留まらず、「設備投資すごかった」ってなるのって世にフィクション多々あれどドゲンジャーズくらいなんじゃないだろうか。度肝抜かれた。


11話目にして今作ヒロインだったヤバイ仮面社長の見せ場満載だった! もおおおおおお社長かっこよかった! 正蔵さんと語らうところ、ヤバちゃんは一言も正蔵さんを責めてない。正蔵さん演じるグレイトZと戦うのを忌避し続けてきた社長なんだから、最初から「他の正義を否定する」正蔵さんの正義のあり方をよしとはしていなかったはずなんだけど、そのことすら否定しない。ちょっとほんとに器がでかい。

そういえば2話まで見たときは、グレイトZもドゲンジャーズもただ悪者だからという理由でヤバイ仮面を奪い合っているんだと思ったんだけど(直後にドゲンジャーズ側というかオーガマンはそうでないことがわかった)、正蔵さんはヤバイ仮面が「ドゲンジャーズの敵だから」連れ去って相手させようとしてたのか。ドゲンジャーズを否定するために。これまで25作品も作ってきた花形特撮なら敵キャラ作れないはずないのになんでかなーと思ってた疑問が解けた。

踊るように簡単にいなしながら陸の覚悟を引き出して正蔵さんにも聞かせるところ、そして陸の正義を認めるところ、夜景を反射する社長がめちゃくちゃ綺麗でかっこよかった。ヤバちゃんは最初から陸を買ってたというか、最終的に自分が相手をするのはこいつだって決めてた節がある。自分にふさわしい相手は自分で決める、を通り越してもはや育てる。かっこいいヒロインだった。
正蔵さんがドゲンジャーズを通じて違う正義を認められるようになっていないと、跡を継いだ陸が自分と違う正義になったときにぶつかってしまうかもしれないもんな。父子まとめて救っちゃうヤバイ仮面社長ほんとにすごい。上司になってほしい。

満を辞しての高岩さんのお顔を見ながら思い出したことがあって、きゃんとくのインタビューで高岩さんの撮影がすごい強行軍だった、着せて、撮って、帰す!みたいな感じだったと何かで読んでたので、高岩さんがグレイトZやるっていってもごく一部なのかと思っていたんだった。制作発表の時のVでドームにいたので、そのシーンだけなのかなくらいに。熊本とか太宰府みたいな遠方のロケはやってないのかなと。
でもその太宰府でのグレイトZの演技が素晴らしくて、私は動きを見て中の人がわかるような能力もないのでどなたでもいいわグレイトZ最高ーと思ってたんですが、11話まで見た今、あのインタビューで読んだことは私の記憶違いかストレートに嘘だったのではないかと思っている。レジェンドをこんなにフル活用するって想像できんわ! アクションも素面もアテレコも⁉︎ これ断られてたらどうするつもりだったんだろう。
グレイトシリーズの全部を作った人なら、高岩さんがやる意味のある役だなあとか思ってたけどもう今は普通に高岩さん演じる正蔵さんが好きです。ところで新刊予約しました。


ドゲンジャーズ側で驚いたことは、まさか昨夜の大乱闘を夢オチにするとは。ドゲンジャーズたちはグレイトZと戦ったことも、トラウマに触れたことも夢だと思ってて、最初から最後までグレイトZは陸だと思ってるから正蔵さんの存在すら知らない(来週会うかもしれないけど)。今期のドゲンジャーズは、結構大事なことを大部分知らない。
これすごく好きだった。大事なことを、別にみんながみんな知ってる必要はないし、それでも敵だったり味方だったりしながら一緒にやっていけるんだという軽やかさが。
ただ物語として考えると、この人はこれを知っててこの人はあれを知らないというのがえらい複雑だし、時系列も前後したりしたし、今期の脚本パズルみたいだなとしみじみ思った。整理されてるから見てる分には別にむずかしく感じないけれど、むずかしく感じさせないまでにどれほどたいへんだったろうと思わずにはいられない。
たった1クールで、全ヒーローの始めた理由と、特撮にかける信念、先達への思い、自分たちの決意を描きながら、新しいヒーローが生まれるまでの物語を着実に紡ぐ。よくこんなことできるなぁ。
もちろん1期の脚本も好きだし(だから今こんなことになってるんだけど)、すごいなぁと思ったんだけど、あのときはその「すごさ」を自分の中で「特撮愛・ローカルヒーロー愛がすごい」ということで説明してしまっていた気がする。
でも今期はほんとに技巧としても信念としてももちろん愛としてもすごい。脚本家として、シャベリーマンさんがこんなにすごいと知らなくてすいませんという気持ち。
しかもその全部にリアルの重さがある。これは友達のツイートを読んで気づいたことなんだけど。
精巧すぎる作り物は実はリアルじゃなくて、少し欠けたものの方が想像力で補われて最後のひとっ飛びができる。フィクションはいつでも想像の力を借りている、というのは前から知っていた。
ドゲンジャーズを見ていると、ヒーローたちが、悪の秘密結社が実在するというリアルの重さが想像力の跳躍を助けると、こんな遠く高くまで到達できるんだと思う。
この間ため池で溺れたら上がれない動画を見てからため池が怖くて、どうやったら助かるか/助けられるかを検索していたら、溺れている相手に空のペットボトルを投げ込むときは、ちょっと水を入れて重くした方が遠くまで飛ぶんだと学んだ。それと似ている気がする。

そんな精緻な脚本でありながら、毎週毎週よくも度肝を抜いてくれるものだと感心し続けてきたけど、まさか、ここにきてこんなことがあろうとは。悪の秘密結社幹部全員新フォーム(シャベちゃん除く)。キタキュウマシンの炎上で叫んだのが遠い昔のことのようだよ。
ところでこの直前の、陸が来るのを待ってる社長もほんとにかっこよかったですね。自分にふさわしい舞台と役者が揃うの待ってるわけでしょう。福岡一の伊達男だよー。社長かっこいいよー。
いやーしかし新フォームの新技とかより先にもう真っ先に、「こんな大規模な設備投資があるってことは、経営戦略上なんかでかい動きがあるだろう!」ということにわくわくしてしまった。減価償却頑張ってー! 他社の設備投資にこんなにわくわくするって、印刷機以外でもあるのね(協力会社が新しい機械入れると弊社もできることが増える)。
あっ一応キャラクターとしてパワーアップしてるのも3回くらい見て気づきましたよ! 社長が最後に持ってるの、棚板みたいな剣の「ワンマン定規」でしたね。前は重くてよろよろしてたけど、軽々扱ってた。
しかしどうしても会社としての動きが大きすぎてそっちが気になる。HPもリニューアルしたし。契約のこととか全然わからないで言いますが、運営母体が違うヒーローをドゲンジャーズの都合で新フォームにはできないんだろうかとか(1期前にカリバーさんガワ変わったけど)、元締いつもお忙しそうだけどこれならショー出られる機会増えるんじゃないとか、なんか、そういう、根拠ゼロで社会人として邪推するのめっちゃくちゃ楽しい。そしてこの楽しさを人に説明してわかってもらえる自信がない。
これが「推しが企業」ということか。設備投資だけでこんな楽しいんだから、株主総会とか絶対楽しいよなぁ。上場が待ち遠しい。

だんだんと陸とグレイトZを好きになっていく脚本なんだろうなと思っていて、それは実際そうだったんだけど、まさか最終的に「実在の企業の次の事業展開が気になる」という脚本だとは思ってもみなかった。思うわけないわ。ドゲンジャーズしかないわ。最終回座して待ってます。信じてしかいない。