徹夜してまで映画を見たい

11月3日に映画を5本見た話。
シン・ゴジラをはじめとした各種ゴジラ映画のネタばれを含みます。


まず11月2日から3日にかけて行われる「ゴジラ誕生祭2016」で3本。どういういきさつで生まれたイベントなのかとかはぜんぜんわからないんですが、「ファンメイド」とあるのでたぶんファンの人が始めたんだろうなということ、2010年からやってて京都でも同じ日にやっている、くらいの予備知識で行くという。
どう考えても三カ月前までゴジラ映画1本も見たことなかった超ニワカが行くようなライトなイベントじゃないだろうとは思ったんですが、84年版を上映するって言うからー! シン・ゴジラに衝撃を受けたものとして、やっぱり84年版と初代はどうしてもスクリーンで見てみたかった。ミレニアムも官房副長官出てくるし。
オールのイベントで20:30開始ってのが初めてで、一回家帰るにしても忙しいなーとか思ってたら仕事がとんでもなく暇だったので急遽午後休もらって三時間ぐらい寝てから行きました。


イベント開始時に、司会の方が「ついに国産の新作がある状態で誕生祭を……」と言っていたのが印象的でした。シン・ゴジラが公開前に劇場でだけ流れてた予告編が上映されていきなりテンションあがったー。矢口さんも赤坂先生も「政府関係者」ってなってた。こういうのを見せてくれるのがさすがファンが作っているイベントだ……!と感動。


日が変わるまではトーク×3組。1人目が里見総理代理こと平泉成さん。全く役作りをしなかったこと、撮影は3日ぐらいだったこと、赤坂先生とカヨコはずっと英語を練習していたこととか。
シン・ゴジラのエピソードではないんだけど印象に残ったのが、お客さんに何かひとことと請われて「徹夜してまで映画を見たい人がこんなにたくさんいて、我々も頑張らないと」とおっしゃったこと(客入りは400人ぐらいって言ってたかな? うろ覚え)。
ここでだったか、合間の時間で司会の方が「ミレニアムを今日初めて見る人ー?」ときいたらチラホラ手が上がり、「これまでの誕生祭では考えられないですね。シン・ゴジラのおかげですね」と。そのあと「ミレニアムを劇場で見た人ー?」の問いには9割以上手が上がってました。さすが。


2人目が村田雄浩さん。まだゴジラ映画全部見てない私ですが、たまたま村田さんの出演作は結構見ていたので終始お話楽しかったー。ゴジラに踏まれたいというのがずっとある、とか、佐野史郎さんの特撮マニアぶりとか。


3人目は造型プロデューサーの若狭新一さん。さすがにこのへんはわからない単語や人名が多かったけど、わかんなくても熱量のある話は不思議とおもしろい。司会の方の知識が年数とかすんごい正確でひたすら感心して聞いてました。


シークレットゲストのロバートさん(vsキングギドラの23世紀からきたアンドロイド役)のカウントダウンで「バースデイ、ナウ!」で0時を迎えて、即シン・ゴジラの上映が始まった。「世界最速でこの日のゴジラをやるんだ! 見るんだ!」と言う気合がすごい。東宝マークが出たら拍手、ゴジラが吠えたら拍手、終がでたら拍手で、もう最高の鑑賞環境だった。ちなみに日本語字幕付きだったのもかゆい所に手が届くセレクトでたまらんかった。この日で11回目だったんだけどちーとも眠くならなかった。


休憩をはさんで84年版。2:30くらいから4:30くらいの間の上映で、しかしここで寝ては意味がないのでポプコーン買って万全の状態で見ましたよ。てか夜を徹して売店が稼働してるのがすごい。臨時のゴジラグッズの売り場にも長蛇の列ができてて、こういうイベントの時の映画館って場所貸すだけじゃないのかと初めて知りました。
シン・ゴジラと続けてスクリーンで見た84年版は、ほんとに徹夜する甲斐のあるものでした。共通点も相違点も、あれがあってのこれか、日本人はこれを脅威と思ってきたのか、いやーもうほんとに行って良かった。


この後の休憩時だったか、スクリーンの上の方にゴミがついてるってものすごい長い棒のようなもので掃除をすることになったんだけどなかなかとれない。かなり長い間悪戦苦闘してたら、リアルヤシオリ作戦だ!ってなって、ちょうど宇宙大戦争マーチがかかったもんだから観客みんな手拍子始めて、取れた時には大拍手。作り手も客も別なく作り上げてるイベントなんだなーと一番思った瞬間。
3本目のミレニアムは、眠くはないんだけど体力的にやばいかもしれないと思ったので途中はうとうともしました。ちなみに隣の人は映画始まったら終始結構がっつり寝てたんだけど、この環境で寝て、目を開けたら常にゴジラやってるってそれはそれで最高だよなぁ。それにしてもミレニアムの最後はほんと衝撃的だぜ。あの世界どうなっちゃうのさ。ミレニアムは劇場公開時のプリントだったそうで、次回作製作決定の特報が流れて終わりました。これ当時見た人はここでおおーって言ったんだろうなぁ。


終わったのが朝7時で、11時間近く映画館にいたのは人生で初めてでした当たり前だけど。てか去年まで(そしてたぶん来年も)映画って年に1、2本見るかどうかだったんだよなー(遠い目)。こんな時間に池袋にいることもあんまないなと思ったのでぷらぷらして、コメダシロノワール(大)食べたらさすがに多かった。ふたたびぷらぷらして帰ってさあ寝るぞと思ったら寝られない。オールのライブ明けは帰りの電車でも寝落ちるのに全然眠くない。無理やり寝ても30分で目が覚める。光と音を浴び続けるってのはこんなに後を引くものなのかと初めて知る。とにかく無理に目を閉じてどうにか11時から15時くらいまで寝る。


身支度整えて今度は新宿に初代ゴジラシン・ゴジラの結合上映会に行きました。どう考えても無茶なスケジュールだとわかってはいたんだけど初代をやるって言うから以下略。
予告編もなく初代が始まって終わり、休憩をはさんでまた予告編もなくシン・ゴジラがが始まって終わるというごくごくシンプルな構成。
スクリーンで見る初代、すばらしかった……。白黒映画ってのはスクリーンで見るとこんなにコントラストきいてて美しいものなのね。宝田明のイケメンぶりが5割増しだったわ。
冷静な大人ならシン・ゴジラ見ないで帰ればいいものをきっちり見て帰るので結局24時間中10時間近く映画を見ることに。結果、その後48時間ぐらい空腹を感じないという状態になったので光と音の刺激と言うのはとても体に悪いんだなと学ぶ。まぁ結合上映前にうどん屋でバカでかいかき揚げを食べたせいもあるかもしれない。
あと1日に2回シン・ゴジラ見たら、初見と同じくらいのテンションで「おおおおおおおもしれーーーー!」ってなりました。最近はそんなに見なくても平気になってたのに、翌日もう見たくなってた。さすがにやめたけど。お腹空かなくて怖いから。


11月3日にこんなにイベントがあるのは言わずと知れたゴジラのお誕生日だからなんですが、そもそも私がシン・ゴジラを見た後ゴジラ映画をさかのぼって見ているのは「ゴジラは災厄なのになんで人気キャラクターになって60年以上も愛されてるんだ?」と不思議に思ったからです。今も思っている。
例えば今シンゴジ実況が盛り上がってるけど、シン・ゴジラの世界ではゴジラなんて生まれない方が良いに決まってる。あれが生まれて日本にきたせいでたくさんの人が死んだ。
シン・ゴジラしか知らない私に初代と84年版がすっと入ってきたのはこれのゴジラが災厄だからです。他のゴジラは別の怪獣と戦って、時には人類の味方にさえ見える。それがどーーーしても理解できない。文句をつけたいわけじゃなくてその時を知らないからどうしてそうなったのかがただただ全然わからない。災厄として生まれたものが、なんで人気者になって人類の味方になるんだ?とこの三カ月ずっと思っていますがわからない。
先達はたくさんいるし、ちょっとだけ本を読んだりもしてますが、それ以上にリアルタイムでミニサイズにされた第二形態が蒲田くんになって人気を博している様子がエキサイティングすぎて先行研究までなかなか手が回らない。これか。62年前にもこういう流れがあったのか。


私はと言えばゴジラに対する感情はやっぱり「怖い」だし、蒲田くんもかわいいとは思えません。東京は好きじゃないけどぶっ壊してくれてありがとうとも思えない。でもシン・ゴジラを見て初めて怪獣映画が時代を映す鏡だということが分かって、怪獣映画の見方がわかった。その点でシン・ゴジラに感謝しています。
愛されるために生まれたのではない存在が愛されていく過程が興味深すぎる。62年前には「怪獣」と言う言葉すらなかった。なかったものが生まれて、ジャンルを作り、存在の意味を変え、それが連綿と受け継がれていくことが。
子供のころから今に至るまで、ゴジラ映画ってずっとやってるけど採算取れてるのかなーと言う程度の認識でした。なんで時代ごとに作られてきたのか、どうして東宝の財産なのか、自分の時代用のゴジラが作られてやっとわかった。シン・ゴジラを端緒として、ゴジラと言う今まで全く見えていなかった超巨大なものが怒涛のように海から現れたような。全貌は全然わからないし全部なんてわかろうはずもないけど、この三カ月ずっと楽しいです。


誕生祭で0時を回った瞬間に拍手が起きて、おめでとー!の声が響いて、私も拍手しながらゴジラは災厄だけどここにいる人たちにとってはやっぱり「生まれてくれてありがとう」な存在なんだなーと感じていました。それはこの三カ月の疑問のヒントなのかしら。「怪獣王」と呼ばれるその唯一の。