ラストフラワーズ

大人の新感線「ラストフラワーズ」
8/6 赤坂ACTシアター 14:00


今週は珍しく観劇なぞ行っておりました。
割とよくある話だと思うのですが、大学の時に演劇サークルの友人の公演を見に行ったら別役実のなんかすごい前衛的なことをやってて2時間中1秒たりとも理解できないという体験をしてから、演劇とは極力距離をとってきました。
お笑いにしろ、音楽にしろ、演劇にしろ、なんだってそうなんですが、つまんないライブを見た後ってシンプルに「死にたい」って思います。昔も今も。祖母が亡くなってからは生き死にに関することを軽々しく口にしないようにしているんですが、それでも、あの金と時間をドブに捨てた感じは「死にたい」以外に表現できない。つまんないマンガ読んでも、つまんない小説読んでも、ここまでのダメージは受けないんですけどねぇ。もうほんと、胸の中がぐちゃっと潰れて、足を前に出すのも忌々しいような気分。そう考えると日々リスキーなことをやっていますわ。お笑いで年間3桁見るようになってもそれは変わらないので、私は「この人のネタが見たいから後の時間は全部我慢する」みたいなライブには行かないし、1度でもつまらないと思ったライブはもう行かないです。怖くて。
そんなリスク回避の点から演劇を避けていた私も、2005年に森田剛が劇団新感線に客演した「荒神」を見たときは、こんっっっっっなに面白い演劇ってものがあるのかー!!!!と目から鱗どころかテトラポッドの落ちる勢いで感動しました。ずぶの素人を楽しませる舞台ってあるのかとそれがもう衝撃で。
こういう大衆を向いたものもあるのか、そしてその一流はこんなにすごいのかと感動し、じゃあ演劇に関してはそういうのに行くことにしようと思いました。ジャニオタだった間は年に何回かお芝居を見る機会がありましたが(なにしろ風間担なので)結局一番面白いと思ったのは「荒神」でした。滝沢演舞城は別ジャンルね。


そんなカルチャーショックを与えてくれた新感線と大人計画が一緒に舞台をやると知ったのが数ヶ月前。こんな有名な劇団が組んでやるんだから私みたいなミーハーもいっぱい行くだろうし、これはメジャーなことをやるに違いない!と、誰が出るかとかよりそっちでがぜん見に行きたくなりました。演劇に関してはディープなとことか良いんです。私でもわかるものが見たいんです!
と息巻いたもののそっち方面のアンテナがないもので、次にそのニュースを目にしたのは舞台の幕が開いたという報でした。やっちまったーと思ったんですが、なんでか月曜にぴあでチケットが取れたので、前置きが長くなりましたが水曜日に見てきました。
以下ネタバレがあります。







(ここからネタバレがあります)
始まってすぐに思ったのが、うわこれ絶対テレビで流せない。そこから、あ、良いのか、テレビに持ってくためにやってるわけじゃないのか、そう気づくまでに数秒かかったのは、出てる人がみなさんテレビでも見たことある役者さんばっかりだったからですが、それにしてもいかに自分がテレビを基準に表現の幅を考えていたのかを自覚してとても恥ずかしかったです。今テレビ見る時間ほとんどないのに。
テレビにも出ている人たちの、こういう表現が、テレビとは別の場所にあるのはすごく良いなぁ。自分が目にしているわずかなものの向こうにこういう世界が広がってると知るとなんだかとても安心する。そしてはっきり言ってうらやましい。お笑いもこういう風にならないものか。台所事情が厳しいのはどこも一緒だと思うけど、それにしても「テレビに行かない限り食えない、そしてテレビに行ったら種目が変わる」って、やっぱりお笑いの特殊事情な気がします。テレビで顔を売ってネタに戻るって人がほとんどいない。
友達とたまに話すんですが、テレビで1億円稼いだ芸人さんから劇場建ててライブに戻ってくるローカルルールとかできないものかしら。バナナマンならホリコムの後輩と、オードリーならケイダッシュの後輩と通常公演やって、たまにビッグネーム同士で交流したりして。人によっては故郷に建てるのも良い。
そんなふうに、テレビで見た人をライブに見に行くって循環がないと、やっぱり客の母数が増えないし、なによりせっかく育ったスタアがテレビに巣立ったあと、あんなに好きだったあの姿もあのネタも、もうライブで見られないけど仕方ないよねってちょっと聞き分けが良すぎるんじゃないかと寂しいのです。


チケットの具合はどうなんだろうと検索していたときにネタばれを踏んでしまって、「星野源が歌う」ということだけ知った状態で行ったのですが、まさかあんなに大事な感じで歌うとは思わなかったです。いや私は星野源のファンですけど、俳優として出てるんだから歌にあまり期待するのもよろしくないかなと勝手にセーブかけてたんですが、まぁ浅はかでした。展開上必要で歌うのではなく、あれは「星野源」ほどの強度のある歌手がいるからああいう展開、ああいう演出になったんでしょう、たぶん。演劇に関することはなんにせよ自信なくて断言できないですけど。見ててそう思いました。
育てた人材活かしまくりだな! そう思ってものすごくうらやましかったです。
そんな星野源の歌に乗せて全員が出てくるカーテンコール。下手側にいたので目の前で星野源が歌ってボックスを踏んでいました。それに合わせてシャンシャン持ったあの錚々たるメンバーが踊るのを見ていて、もう途中から口をあけて涙ぐんでいました。感動するほどの知識がないので感動でなく、ただただ処理しきれなくて。何も知らないけどこれがすごい光景だって言うのはわかる。確かに総天然色だった。そしてなによりおっさんがシャンシャン持って踊るのちょうかわいい。
銀テープ持って帰ったのなんか内クンのソロコン以来5年ぶりくらいかもしれません。あれはもう捨ててしまいましたが。


お話の筋としては「荒神」のときみたいにうおおおおおおもしれぇぇぇぇぇ!とはならなかった、というか、好みもありますが最近頓に漫画以外のフィクションが得意でないので、たとえば小説だったら最後まで読めずに挫折していたと思うのですが、演劇だと3時間35分かけてあの歌にまで連れて行ってもらえることが楽しかったです。エキサイティングと言うか。
次は新感線の公演に行ってみたいのですが、そっちだと星野源はいないのか(あと音楽もスカじゃなくてヘビメタかも)と気付いて、やっぱり今回は千載一遇だったようなので見てよかったです。できることならあのカーテンコールをもう1度見たいですが、ちょっと財布がギブを出しているのであの一度きりの光景を反芻します。実際ずーっとあの歌が頭の中で流れてるんです。ラーストフラワー…… ラーストーフーラーワー……