愛と努力と

K-PRO児島気奈トークライブ『9〜来年K-PRO十周年の前に振り返ります!〜』
11/1 ロフトプラスワン 24:30


入場したら児島さんが誘導をやってたので笑ってしまった。
完売表示出なかったなーオールだしなーなどと思ってたらロフトプラスワン相当満員だった。芸人さんの名前出てなかった状態で、児島さんの動員力たるや。大和さんに「ロフトからこの地味な女金になる!って思われる」って言われてた。
ああああ楽しかった。主催者という立場の人のライブでも、いつも通りお客さんを飽きさせないサービス精神満点で。フライヤーに古いチラシを折り込んだり、休憩中に貴重なVTRを流したり、FKDでやってるみたいなオリジナルドリンクを作ってそれを買ったら割引券が当たる籤が引けたり。K-PROさんといえばまずなにより芸人さんへのリスペクトとお笑いに対する愛の深さだけど、客への心配りが本当に素晴らしい。
気づけば芸人さんの主催か、事務所主催か、K-PROさんのライブにしか行かなくなっているのだけど、芸人さんのネタの部分以外でお金と時間を費やす価値がある娯楽として成立してるライブにしか行きたくないと思うといつの間にかこうなっていた。予約の返信、整列、誘導、出し捌け、その他諸々ライブの内容以外で萎えてしまったら行きたくない。K-PROさんはそれら全て完璧以上で、逆に言えば、K-PROさんがなかったら私は一体何を見てたんだろうなと思うとちょっとぞっとする。


ナタリーさんにレポートが上がってるのと、
「努力がすごい!」K-PRO 9年の歴史を芸人たちが賞賛


アイリスさんがまとめを作ってくださってるので
K-PRO児島気奈トークライブ【9〜来年K-PRO十周年の前に振り返ります!〜】


詳細は省いて忘れたくないことを羅列で。


前説がまさかの児島さんご自身で(笑)、みのマネからもらった花束を持っていた。開演前に花束持った男の人いるなぁ、児島さんのファンかなぁどっかで見たことあるなぁと思ってたらみのマネだったのね。たいへんに流暢な前説で、そうかー、昔のK-PROさんライブでは児島さんが前説やってたこともあるのかーと思ったらちょっとそのときのライブから見てみたかったなーなんて。会場入り口にスタンド花も届いていた。


ゲストの芸人さんも今まさにライブの話を聞きたい!と思う人ばかりで、絶妙のチョイス。三四郎浜口浜村がいたのが嬉しくってねー。浜浜を招き入れるときに「今うちのライブでレギュラーが3本あって、どれも出たいです!と言ってくれました。浜口浜村、浜口さん、浜村さん!」みたいな感じで紹介していてちょっとじーんとした。浜浜あんま喋ってなかったけど、森田さんに「若手はボケるか、動け!」と言われてたのがハイライト(笑)。浜口さんがハンバートハンバートのTシャツにカーディガン合わせてて可愛かった。年表トークの時は指名された芸人さん以外は桟敷で自由に飲み食いしてて下さいという、「芸人は腹を満たせれば何でもやる」という児島さんのポリシーに溢れたシステムだったのだけど(笑)、いっぺん見たときに浜村さんが丼飯をかっ込んでいて欠食児童かハムスターかという愛くるしさだった。
ちなみにジンカーズの呼び込みは「この人たちのライブの作り方はとても勉強になります、ジンカーズ、馬場さん、樋口さん!」みたいな感じ。コンビで来てるところの名前はどっちも呼んでくれて、そういう小さなことが愛と信頼の証だよなぁ。ライブ直後に馬場さんがこんなことを仰っていて



今度の12月1日以外ならどこだろうと何時からだろうと行くわ。ものを作ってる人の話って、ほんとーにおもしろいんだよー。



ケータリングの話。最近他のライブでもケータリングをまねるところが増えてると。昔はライブにケータリングなんかなくて、学祭に行った誰かがそこにあったお菓子を持って帰ってきて並べてたぐらいだったそうな。
松原さんがケータリングを持って帰る手口を詳細に聞けた(笑)。松原さんが大量にケータリングを持って帰るので、松原さんが出るライブでは多めに用意するらしい。みんなが盗人だという中、児島さんは「ちょっとでも食べ物を食べて、(体調が)良くなってくれれば……」と仰ってくれて泣けた。
しかしこないだはケータリングにカップラーメンがあって、松原さんがもったいないからとカップラーメンをたくさん食べていたのでみんなに食べ過ぎて体調崩すぞ!と心配されていたらしい。松原さん、塩分!


怒ったりするんですか?と言う質問から、ライブで若手を注意する話とか。企画は○○ですーと言ったときに「イェー」みたいに盛り上がらない人を注意していたら、あるとき勢い余って風松にも「言ってない!」と注意してしまったと。みんなからそんなキャラじゃないと言われる(笑)。「馬場:風松は許してください」。


個人的に長いこと疑問だった500席にこだわる理由が聞けたのがいちばん良かった。村田渚さんに、このメンツ集めるなら500席埋めないとダメだと言われたということ。他にもたくさんのことを教わって、そしてその人が亡くなってしまったこと。死んでしまった人のことが、いちばん裏切れないよなぁ。裏切ってしまったら、もう取り返すことができないんだもの。
事務所から出演を断られたものの、渚さんから直接連絡をもらってライブに出てもらえたと児島さんが言った後、清和さんが、解散した後の渚さんアグレッシブやった、俺らと毎月twlにも出てた、と補足するように補強するようにエピソードを言ったのがすごく素敵だった。私は過去を全然知らないけど、歴史が続いていて、それは断絶したものではなくちゃんとまだそれを知っている人が現在を作っているんだと言うことを目の当たりにした。亡くなる前の渚さんは、酔うと児島さんに電話して「今後のお笑い界をどうするのか」って言っていたらしい。あと12時間大喜利につきあった話とか。


K-PROさんがよく、うちは台風とぶつかると言っていて、それはぶつかると言うより月のライブ数が多いからどっかには当たっちゃうだけなのでは……と思っていたら超初期の行列の先頭が台風にぶつかっていて失礼ながら笑ってしまった。「児島:このあいだ10年に1度の台風が来たって言ってた、あの10年前の台風です」って(笑)! 10年スパンで両方当たるってそりゃ相当だわ。


終盤でエレジョン加藤さんが「前から言ってるんだけど、劇場持たないの?」って言って、他の芸人さんも同意していた。そう言うお話しもないことはないらしいんだけど、さすが昔悪い大人にだまされた経験が生きていて慎重なようだった。実現するときにはきっと良い形で実現すると思う。
個人的に、NHKの新人演芸大賞でビーフケーキの「ペペペドミア共和国」を見たときに何が衝撃だったってあの大道具。コントって大道具つかうのか!って衝撃だった。私が見ているのは非吉本の人ばっかりなので、劇場に大道具が置いておけないから基本マイムで全部やっちゃう。そういうのがコントだと思ってた。
もしK-PROさんが劇場持って、そこにソファとベットがあるだけでもう東京のコントが全然違ってくるんじゃないかと。全部をパイプ椅子でやらなくて良くなる。そう言う意味で、たぶん芸人さんのネタに関わってくると思うのね。大げさじゃなく。


最後に大和さんがコップ倒すほど興奮して熱弁ふるってたお金の話、いや私、受け取ってくれるんならお金渡しても良いんですけどね。芸人さんの本質って結局「クズ」だと思うから(褒めてます)、無条件でお金渡したらたぶんネタもつくんなくなると思うんですよね。なのでやっぱり児島さんの、ネタがお金になるシステムの確立を期待したいです。


女だてらにって言うと時代錯誤だけど、男社会のお笑いの世界で、女性故に苦労したこともたくさんあるんだと思う。でも最後に男だ女だって話になって、「芸人さんの奥さんになる人は、その人のことをずっと一番おもしろいと思って支えて行かなくちゃいけないから大変。私には無理です」と仰っていて、そのシビアさに居住まいを正す思いだった。芸人さんをきちんと技量で、その時々で誰がおもしろいかをライブ制作ノートに逐一記すシビアさ。さすがあのライブを作っている人だと思った。
児島さんはほんとうに素敵な人だけど、どこかに芸人的な不気味さというか底知れなさをもっているような、絶対に「こっち側」ではないけど完全に「あっち側」の人でも無いような、他に見たことのない独特な人で、たった一人この人だけがどれだけのものを担っているんだろう。ご本人は、スタッフに支えられていると何度も何度も仰っていた。


*  *  *


以前カウンタートークのゲストが児島さんだったとき、相当楽しみにしてたライブを捨ててまで行ったことがある。そのくらい、いちばんお話を聞きたい人。そのときもまだ話したいことはあるのでまた……みたいなことを仰っていたのだけど、結局ロフトが企画するまで出てきてくれなくて、請われないと出てきてくれないんだよなぁ。しかし自分から出てくるような姿勢の人ではあんなにみんなから愛されないだろうから当然と言えば当然か。
こないだ書いたけど私は人につくタイプのミーハーなオタクなので、そのジャンル丸ごと、歴史も未来も含めて愛してるって人はほんとうにすごいしほんとうに尊敬する。私は今たまたまお笑いに好きな人がたくさんいるからお笑い全体の状況良くならないかなぁって思ってるだけで、過去を全然知らない。とはいえそこで「自分みたいのはダメだ」って卑屈になるほど若くはないので気楽にどんな貴重なライブでもずんずん行くけどねー。年をとるってのは便利だ。
嫌なこともたくさんたくさんあるだろうけどそれを微塵も感じさせないでいつも楽しいライブを作ってくれるK-PROさんに、行って笑うことでしか報いることができないのが申し訳ないくらい。でもそんなん気にして欲しくないんだろうな。ただ一つだけ、日々に楽しみをくれてありがとうございます、K-PROさんのライブがあるから楽しく暮らしていますと言うことだけ伝えたい。



ナタリーさんのこの写真がまるで涅槃図のようだと思った。



(引用元:http://natalie.mu/owarai/gallery/show/news_id/102762/image_id/230704



これはこないだ行った福田美蘭展で見た「涅槃図」。



入滅されたら困るけど! でもK-PROさんがライブシーンにおける天国になるならばそれはそれであっているのかも知れない。入滅されたら困るけど!