若いってこと

ドドん第二回忌単独ライブ「坊走〜ぼうそう〜」
9/7 新宿シアターミラクル 15:00〜17:00


事務所ライブには行ったことない程度のライトなファンなのに、いやライトさ故か、私はドドんに多大なる期待を寄せている自覚がある。それも、売れるとか流行るとかを越えて、彼らなら今の一方通行であり詰まりに詰まった道とは違う道を見つけてくれるんじゃないかと言う大きすぎる期待だ。とはいえ彼らは「テレビに出て爆売れしたい」と言う至極真っ当な希望を持っているので完全に私の勝手な期待に過ぎない。
そう期待する根拠は、ネタと振る舞いの他は「トークライブで前回の単独のDVDを売る」「さらに次のトークライブで前回のトークライブのDVDを売る」「単独で物販をやる」と言うあの世代に珍しいきっちりしたガツガツさが大きいのだけど、これは浅井企画の大将がスパローズだからかもしれない。


ドドんの2回目の単独ライブ。初単独には間に合わなかったので昼夜行く気満々だったのだけど、ライブ被りがあって昼の部に。映像の占める割合が今まで見た単独の中では一番多かった。コントが一本で、あとは漫才。
チラシのどこにも書いていなかったけれど、今回の単独の副題は「キャラ漫才の向こう側、見せてやんよ!」だとトークライブで言っていた。その副題を、最初の挨拶代わりのネタの〆の言葉にしていた。トークライブで聞いたときには、その覚悟にわくわくしたのだけど、今日はその言葉の直後に暗転した暗闇の中で、ちょっと違うなと思った。ドドんはすでに、ただのキャラ漫才の地平にはいない。少なくとも私はそう見ていることに気づいた。でも向こう側と言う感覚でもない。彼らはもう、なにか一段高いところにいて、その上でキャラ漫才をやっているように見えた。恐らくは、私が最初に見たときからすでに。
その「一段」と私が思っているのは、彼らの異常なまでの「盤石さ」だと、一本の単独ライブを見ている間に気づいた。
ふたりが出てきて、石田さんが説法のように客席に言葉をかける。あの口調と、「お坊さんはしっかりした大人」と言う先入観も手伝って「なんかすごく完成された人が出てきた」と思う。その直後の「……ドドんですー。」と言う安田さんの、冷めたようなスカすような間と言葉。あの一連ですっかり術中にはまっている。その後とちったりしても、石田さんの間髪入れないリカバーも動じない安田さんも含めて全部狙いだと思ってしまう。今日も石田さんが早々に嚙んだら、安田さんは客席に目線をやりながら「みんな味方だぞー」と見事なフォローを入れていた。


一本だけやったコントは、棒読みを全部笑いに変えるように作られていたし、漫画的ベタな展開も組み込んでは即笑いに変えていた。たくさんのたくさんの情報が得られる時代のただ中にいて、「なんでそれやっちゃったの」と言うところに絶対に行かない安心感が、あのふたりにはある。闇雲にやりたいことだけやるのではなく、一度きちんと周りを見渡してから始めている。これは、ジグザグジギーを見ていても思うことなのだけど。


うまいとか達者だとかは、時に誉め言葉ではなく受け取られそうだけど、他意なく感嘆とともに達者だなぁと思った。恐らくは準備が足りない部分も多々あった。でもそれすら見せて良いものにしてしまう愛嬌があって、全部織り込み済みに見えた。あまりに達者で、彼らの若さが逆に奇妙に思えた。
若いと言ってもふたりとも年齢は極端に若いわけではないのだが、コンビ歴が4年。その芸歴だと私が見る都内のメジャーなライブでの位置がかなり若いのだ。
ひょっとしたら彼らは、芸歴を重ねたらもっとしっくり来るのかもしれない。芸歴を重ねて何か身についたらと言うのではなく、理屈抜きである程度の年齢にならないと金のアクセサリーが似合わないように、ただただ年月が経てば。
今があっての未来だと思っているので、「理想の自分が未来で待ってる」的な考え方は好きではない。ドドんは逆に、今の彼らの方が現在よりも先にいて、他のいろんな物が追いつくのを待ってるんじゃないか。


自分が年をとってくると、若かったときの便利さばかりを思い出す。固有名詞がすらすら出てきたこととか、一度読んだだけで暗記できたこととか、一晩寝たら全部回復したこととか。
ドドんはわかっていることもやりたいこともありすぎて、時々それが自身の若さと釣り合わずもどかしいように見えた。若いってことは、勢いと元気があって良いことばかりじゃなくて、あれもこれも思うようにならないもどかしいことでもあったと思い出した。そのもどかしさにちょっと目を伏せそうになって気づいた。まぶしい。


最後のネタで石田さんは叫んだ。
「みんなの期待に応えたい!」
期待している自覚はある。彼らにも、期待されている自覚がある。それが一致しているなら期待の内訳が違ったって良い。
明るくて可愛いOP曲には「蒼い時代」、男臭いED曲には「青い春」と歌われていると気づいた。
ドドんはあまりに確かで、でも足りないところもあって、全部計算尽くに見えて、そうとは思えないくらい楽しそうで仲が良さそうで、ずっと見ていたいのに目をそらしてしまいそうになった。未来まで続く長い長い青春の真っ直中にいる彼らはまぶしかった。


OP説法
漫才「出会い」
OP Wienners「蒼天ディライト」
漫才「坊拳」
VTR「学力テスト(前編)」
コント「石田中学時代」
VTR「学力テスト(後編)」
漫才「はまっているもの」
VTR「プレ打ち上げ」
安田が歌います「相方はお坊さん」
VTR「安田画伯の絵しりとり」
漫才「ツッコミやりたい」
VTR「お坊さんのプライベートに密着(前編)」
VTR・漫才「これからのドドん」
VTR「お坊さんのプライベートに密着(後編)」
漫才「苦行」
ED THE イナズマ戦隊「なぁ次郎」