3組6人1つの魔法

三四郎浜口浜村・ドリーマーズの3組のライブ(仮)
4/17 しもきた空間リバティ 19:00


終わった後に不思議な高揚感があった。バトルライブとも単独ライブとも違う。全く瑕疵のない、100点のライブだったかと言えばそうではない。しかしアンケートの満足度の欄は5に丸をつけた。100点ではないけれど、点数でなんて計れないライブだった。


もしもライブと言うものが、単純にこの組とこの組とこの組と……のネタを見られるだけのものならここまで通い詰めていない。そう言うライブももちろんある。でもK-PROさんのライブの楽しさは、単純にひとつずつのネタの楽しさの足し算ではない。
ライブの楽しさを考えると、小沢くんが「犬は吠えるがキャラバンは進む」で芸術について書いていた文章が頭に浮かぶ。

芸術について僕が思うのは、それはスーパーマーケットで買い物をするようにアレとコレを買ったからカゴの中はこうなるというものではなくて、アレもコレも買ったけど結局は向こうから走ってきた無限大がフュッと忍びこんで決定的な魔法をかけて住みついてしまったどうしましょう、というようなものではないかということだ。

魔法がかかるかどうかは、足し算ではない。3ならかかる魔法が、4ではかからないことは容易に想像がつく。三四郎浜口浜村・ドリーマーズの3組なら魔法がかけられると無根拠に思っていて、しかし若くて事務所が違う3組だけでそれを見ることはむずかしいとも思っていた。
だから、このライブの前身になったSimple Set HARFが決まったときすでに、両手を挙げて喜ばん勢いだった。単純に、「好きな人だけが見られる」喜びではない。もともとライブは見る前に「こういうものが見られるだろう」と予想をつけてお金を払うものだけど、このときはまったく目に見えない、予想もできない、見積もれない、ただただ「かかるかも知れない魔法」に対して、前のめりで対価を支払った。同じことを思った人がたくさんいたのだろう。V-1は満員で、そして3組のライブ(仮)につながった。


ゴッホくんの作ったOP映像が象徴的だった。各組の漫才のフレーズを強く美しくフィーチャーしていて、この3組だけが作り出せるものを大切に大切にしてくれていた。
企画は内容だけでなく、MCの配置と時間配分にK-PROさんの神経が行き届いているのがわかった。FKDや米騒動クラスだと演者に任せる部分も、客席の疲れ具合を見てきちんと仕切ってくれていた。そこまでしてでも、この3組だけでライブをすると決めてくれたことが嬉しかった。そして最後のネタカバー。きっと見られると思っていたような気もするし、全く予想できなかったようでもある。ただ、「私はこれが見たかった」と笑いながら思った。


K-PROさんはたくさんライブをやっているけれど、「こういうライブにしよう」という枠の前に、演者がいるライブは珍しい。そう思って私の見ているお笑いの界隈を見渡してみると、「人」が「枠」に優先している状況が驚くほど少ないとわかる。バトル・勝ち抜き・入れ替えが普通だからそうなのかもしれない。
しかし何かを好きになる時、「枠」を先に好きになることはない。まずその枠の中にいる「人」が好きになって、だんだんと枠ごと愛さずにいられなくなる。
中の「人」が変わった時、もうその「枠」は形を変えている。その形が変わった「枠」を続けて愛せるかどうかは、そのときになってみないとわからない。
私はyardが大好きだけど、これはゆるやかに形を変え続けるyardそのものが好きでいられるから通い続けている。もしもyardが、何か納得がいかない採点基準を設けて理不尽な入れ替えをするようなライブだったら、あんなに来る人来る人好きになっていない。


枠が残っても人が変わったら、その枠の中でかかっていた魔法は解けてしまう。かかり続けているように見えたとしたら、それは新しく別の魔法がかかったのだ。魔法は人と人の組み合わせでしか起きない。それをいちばん最小の単位でやっているのが、コンビだ。
枠に固執して人を粗末にすることは、みすみす魔法を放棄することだ。


3組のライブ(仮)を見て、はっきりと、枠は人に優先しないとわかった。枠ではなく、過たずあの3組だから、大切に思う人たちがいてライブを作り上げている。それを教えてくれたこのライブが、仮称のままで、枠すら成していないことが嬉しい。
枠がないと言うことは、いつか彼らが忙しくなって、集まれなくなった時でも、逆に魔法は解けずに持続し続けるのではないだろうか。いつもは見えなくても、別のステージで会った時に、たちまち発動するように。
というのはだいぶん先の話として、まずはまた次回、魔法を浴びに行くのでよろしくお願いします。

  • OP映像
  • OPMC ライブタイトルを決めよう MC:浜村さん
  • 浜口浜村
    • 「お金が大事」
  • ドリーマーズ
    • 「羊」
  • 三四郎
    • 「ものまね」
  • 企画「コンビの相性診断」 MC:坂本さん
    • いちばん受けたネタ/いちばんの喧嘩/ボケの腹の立つところ
  • 三四郎
  • 浜口浜村
    • 「こぶしねこ」
  • ドリーマーズ
    • 「怖い話」
  • 企画「質問になるべく全部答える」 MC:相田さん
  • 浜口浜村
    • 「ドリーマーズの『無人島に持っていくもの』」
  • 三四郎
  • ドリーマーズ

出囃子

浜口浜村はっぴいえんど「風をあつめて」
ドリーマーズ:RADWIMPSドリーマーズ・ハイ
三四郎銀杏BOYZ「SEXTEEN」


風街ろまんドリーマーズ・ハイSEXTEEN