明るいほうへ

R藤本初単独ライブ「待っててやるから早く来やがれ!!」
4/21 シアターブラッツ 15:00


R藤本氏の初単独。詳細なレポートがナタリーさんにあがっているので、印象のみを。


私は吉本の劇場にはほぼ行きませんが、「アンチ吉本」とかいう気は全然なく、というかこの言葉をはっきり発する人って非吉本お笑い好きの人では見たことないので、非吉本好きの人には吉本のライブ芸人さんが「嫌い」っていう感情はあんまないんじゃないかなぁ。見る機会がないから嫌う材料も知らないのです。吉本の劇場や団体芸の雰囲気は苦手なとこもありますが、普段のライブで見る機会のある吉本の芸人さんはむしろ結構好きな人が多いです。パルパティーン大好き。
そんな中でも見る機会があるとことさらに嬉しいのがR藤本氏。トッパレのレギュラーで、かつてはプレスリーのメンバーでもあったR藤本氏。常にキャラを崩さず、そのまま大喜利でも笑いを取り、EDではフリに応え続ける生真面目なべジータ様。
以前読んだブログの文章の聡明さに感服し、インタビューズでもその目から鼻に抜けるような明晰な答えに、これは目を離しちゃいけない芸人さんだと思いました。決してメジャーな芸をやっているわけではないと思うのですが、あらゆる文章があまりにも明るいほうへ向いているように見えて、彼には開けた未来しか想像できないのです。
ちなみに最初に読んだブログの記事がこちら
東西インディーズお笑いライブ事情、その1
東西インディーズお笑いライブ事情、その2


そんなR藤本氏の初単独。告知の際に「とりあえず皆様、どちらか1公演のみの購入でお願い致します。」と言う一文がありました。
ちょっと、へーっと思いました。感心と言うか、複数回見る熱心なファンをあてこまないのかと若干心配……というのも違うんですが、即完売させたいとかそういう気持ちはないんだなと。実際、発売後に興味を持った人が余裕を持ってとれるくらいの速度で、きっちり完売させたので、ますますその自分を客観視できる姿勢に感心してしまいました(実際は毎週社員さんにチケットの売れ行きを聞いていたとばらされてましたが)。
直前の注意書きも、書いてることは確かに業務連絡なんですが、文章にはお人柄が出るものなのだなとしみじみ。


初めての単独ライブは定刻通りに始まり、そんなところも生真面目だなぁ。OPのVTRで、渋谷のスクランブル交差点にべジータの恰好のまま(しかし人が多くて邪魔になるからか肩の三角のは外した軽装ver.で)立つところから始まり、渋谷にいるのに∞ホールには行かないで中野に行き、そこから芸小、twl、なかのZERO、Vスタジオ、浅草のリトルシアター、こしょうばこ(4月15日閉館)、東洋館もあったかな? そして新宿、ミラクル、Fu、バイタス、V-1、ブラッツ……等々とにかく普段東京インディーズがライブをやっている小屋を網羅して次々ポーズをとるべジータ様。最後は吉本本社の校庭で、サザエさんのパロディで終わるそのVTRは、彼の主戦場はここだという気概にあふれていて、もうこれだけで見に来てよかったと思ったのでした。


最初のべジータ漫談で「今日はチャパ王とか言っても通じると思ってやるからな!」と宣言。私は一応ドラゴンボールは全部読んだはずなのですが、セルゲームのあたりからあやふやなのでわからないこともありました。それでも笑える不思議さ。知らないことはむしろ針の先で突くようなことの方が笑えるのかもしれない。
ネタには普段見るよりもアダルトな要素が多く、なるほどこれが真骨頂なのかと興味深かったです。なんか下ネタと言うよりアダルトと言いたいような、なんとなく下品な感じがしないのは、生来の清潔感ですかねぇ。
歌ネタを最後に持ってくるのも素晴らしかった。客席大盛り上がりで、歓声が飛んでた。それをよしとする構成にしてくれたのはほんとに心憎いですよ。
EDのDragon Ash「Grateful Days」を完全にパロディ化した「Battleful Days」のクオリティが本気の遊びでまぁすごかった。タイトルのスクリプト書みた瞬間神奈川テレビのMutoma Japanがよみがえったよ……。


全編にわたって、「やりたいことを全部やってやる」と言う気迫がびしばし伝わってきました。ピッコロがべジータのもとを訪ねる「あのナメ」の1人コントバージョンや、「なかなか死なないべジータ」の「サイヤンカーニバル」部分だけはK-PROさんのライブで見たことがありました。つまり普段見せているものはR藤本という芸人のいわばダイジェストで、この単独ライブで見せたものこそが彼のやりたいことなのだなと強く強く感じさせるライブでした。ネタ自体の面白さはもちろんですが、それ以上にひとりの芸人の姿勢や為人を感じることができ、これぞ単独ならでは。単独への取り組み方は、そのまま芸に向き合う姿勢でした。その真摯さにあてられてしまって、もうすっかりドラゴンボールが全巻読みたい。
EDで私服で出てきた皆さんが、やっと人間に見えて逆にびっくりしてしまった(笑)。たくさんゲストがいたのに、ゲストはあくまでお手伝いに徹して、R藤本氏の単独である印象を薄めなかったのもよかったなぁ。以前行った吉本の単独で、単独と言うよりそのコンビが座長の興業みたいだな―と思ったことがあったので。


吉本のことを知らずとも、なんとなく一匹狼な印象があるR藤本氏。「活動をシンプルにしたんですよ」とか、オーディションについて「強制参加じゃないものはほとんど受けていない」などと書かれていて、自己プロデュースをきちんと考えてらっしゃるタイプの芸人さんなんだと思っています。あまりに聡明なので、∞ホールで滑り散らしているという姿が想像できないほど。今後はユーモア軍団の活動もカギになってくるのかなとなんとなく。
いつも真面目な顔をしていて、平場でも目が笑わないタイプの人。EDでは暗転する中、いちばん長く頭を下げていました。
このライブがやりたいことのすべてではないのだろうということ、この単独を経てきっとまたやりたいことが増えたのではないかと言うこと、そして何度も言いますが、汲めども尽きぬ聡明さに、ますます目を離せない芸人さんだという思いを強くしました。平日夕方の∞ホールに行くのは、ちょっと無理なんですけど。