僕は見ておこう

漫才5・コント5 #4
2/8 しもきた空間リバティ 19:00


K-PROさんのライブは、ただ良いメンツをそろえるというのではなく、そこからの展開と未来が感じられるから演者のネタ以上の楽しみがある。
というのは都下お笑いライブ好きの共通認識と思うが、その中でも特に満足度が高いのが「漫才5・コント5」。次回からはたとえ出演者が一人も発表されていなくても、予約をとってしまおうと思う。

ネタ・漫才

エルシャラカーニ
間取り。首を絞めるくだりがたまらん(笑)。言い間違いの重ね方も、それをスルーするのも、どんどん練られてエルシャラの漫才はこの先どこまでおもしろくなるんだろう。


風藤松原
トーク番組の司会者。クイズのくだりが増えてた。同時に、かぶせるのが増えてて良いなぁ。一回風藤さんがとちりかける。大喜利系はごちゃごちゃになるんだろうなー。
なんでこのネタなのかなとちょっと違和感を感じたんだけど、週末にオンバトの収録があったようで、そこでかけたんだとしたらなんとなく納得できる。まぁなにやったのかわかりませんが。


流れ星
なんて言えばいいんだろうあれ。飛行機漫才? ふたりで飛行機のジェスチャーしながら離婚の話をするという……。かなりカオスだったけど、そういえばTHE MANZAIの準備に入る前の流れ星にはぽかーんとすることが結構あったなぁとなんとなく懐かしい気持ちになった。


ハマカーン
ケイダッシュライブでやってた相方だから腹の立つこと。おもしろいし、うまいし、見ていていろいろと考えてしまう漫才。でも2カ月でここまで変わる漫才を、今評する必要はないのかなとも思う。次のTHE MANZAIまでにどうなっているか、なんだろう。


磁石
マフィア、でいいのかな。認定漫才師ネタをなぜか今! いやそれやるベストなタイミング12月にあったよ! 
関係ないけどジンカーズの形に切り抜かれた胸の隙間を一番埋めてくれたのは、ネタ中に永沢さんを見てえっらい笑ってるさっさんでした。自分のセンチメンタル回路がよくわからない。

ネタ・コント

かもめんたる
先祖の職業。初めて見るネタ。う大さんのキャラのバックボーンが底知れなくて怖い(笑)。たぶん色んなパターンのオチがある、もしくはできていくネタなんだろうな。


ダブルブッキング
落としの川さん。本ネタ見たのの久々だったんだけど、相変わらずひどい(ネタの出来がではなく、川元さんのキャラが)。怖いっていうより残酷なんだなここのコントは。よくそんな、取り返しのつかないことをあっさりとやってのけるよね……と冷や水をぶっかけられるような。でも不思議と華やかだったりする。おもしろかったー。


トップリード
役立たず。切磋琢磨の意味が違ってる気がして、どうもひっかかっちゃうんだよなぁ。最後の「ええ」の応酬はいつみてもほれぼれする。終盤だというのに、客席がさらにぐっとひきこまれるのがわかった。


どきどきキャンプ
ケイダッシュライブでやってた「鼻歌泥棒」。いろいろ絶妙(笑)。どきキャンのコントは登場人物の関係性がよくわからなくても成立するのがおもしろいなー。ご本人たちにあまり友人として特異な関係性がなさそうなので、それが良い風に作用しているのかな。


うしろシティ
笑っちゃうよな。単独のネタだけど、ネタの中で話されるエピソードをごっそり変えてきてた。はー、こういうチューンナップの仕方もあるのか。金子さんの悪意のない手に負えなさが存分に発揮されててこのネタ大好き。

企画

恒例シャッフル漫才orコント。MCは黒田さんと新妻さん。この企画は毎回必ずコンビ名、トリオ名をつけるのが良いなぁと思う。ネタとお笑いに対する愛とか敬意とかってそういうことだ。


1組目
神田+佐藤=「佐藤と神田2012」
設定:時代劇(漫才)
ケイダッシュ同士ということもあってかあまり焦りもなく、すんなりとスタート。立ち位置が同じなので、サンパチの前で上手を取り合う。途中からサトミツ氏が神ちゃんをばしりとツッコミ始め、口調が若林氏そっくりに。終わった後神ちゃんに「1人で春日と若をやってた。」と言われる。
佐藤:実際ネタでやってるしね
神田:オードリーとサトミツでオードリーのANN作ってるから
続きはケイダッシュライブで!って言ってたのここだったかな?
名前を付けたのはサトミツ氏だったんだけど、なんかに似てるな―と思ったら「佐藤と若林の3600」だわ。


2組目
瀧上+新妻=「ちゅうえいず」
設定:新聞勧誘(漫才)
とにかく流れ星大好きな新妻さん。憧れのちゅうえいの位置ができる!と感激。
瀧上:お前の俺らへの過大評価ひどい!
新妻:ダウンタウンか流れ星か
立ち位置は瀧上さんが上手。冒頭いきなり「新妻:あーいつはー古い俺新しいー!」(笑)。それに対して「おもしろーい」とちゅうえいの台詞を促してあげる瀧上さん。新妻さんも、コントの設定に入るところで一回はけようとして戻ってくるところとか、ほんとにきっちりちゅうえいさんを真似ててすごい。
大好きなゲートボーラー米蔵の冒頭ができて嬉しいにんにん、ちょっと泣いてた(笑)。


3組目
浜谷+黒田=「浜谷健司ーズ」
設定:甲子園(漫才)
くじ引く役割だった黒田さん。自分を引き当ててしまい、「俺はツッコミじゃないよ! リアクションだよ!」と叫び膝が震えるとアピール。とにかく怖がる黒田さんを浜谷氏が大丈夫大丈夫となだめてスタート。黒田さんの立ち位置は浜谷氏の真後ろ(笑)。
そこからがすごかった。とにかく浜谷氏が喋り続け、黒田さんは時々背後霊のようにひょこっと出てくる。で、すべると戻る。浜谷氏がとにかく絶対後ろを振り返らない。「パンさん出た!? パンさん戻った!?」って聞くけどそっちは見ない。下手で見てた神ちゃんも爆笑。
オチは黒田さんが一回すべって戻ったあと、「川元さん、ボケくださいー」って袖に行って戻って挨拶だったかな。芸人さん感心するわ笑うわで大変。神ちゃんはハマカーンでこれやりたいと。他の人たちも、袖で横から見てると普通の漫才みたいに見える、青山円形劇場でできる漫才だよ!と絶賛。


4組目
ちゅうえい+槙尾+岸=「岸三中」
設定:バレンタインデー(コント)
ここから人数稼ぐためトリオに。出てくるなり「ちゅうえい:ここで終わっとけや! あんな新しくて面白い漫才の後でできるか!」
名前決めるときに「岸:なに三中にする?」。三中ありき(笑)。槙尾さんが女子設定で岸君と腕を組んで出てくるのに、ちゅうえい演じる鬼が出てきたあたりでなぜか岸君も女子に。かなりぐだぐたになるのに終わらせないちゅうえい(笑)。
コントが終わった後、瀧上さんがコント中のちゅうえいのことを事細かに解説していた。チョコレートおじさんでどかーんとくる画が浮かんでたのにそうでもなかった、ちゅうえいはすべると喉がキュッとなって声が小さくなる、と。さすが相方……。


5組目
風藤+松原+金子=「うしろ風藤松原
設定:アイドル(コント)
「金子:お邪魔する形になるんですか? この完成されてるところに?」周りがせっかく出してあるからとパイプ椅子を二脚並べ、風松がそこに座ってしまう。金子さんはけて暗転。
風藤さんが喋りはじめ、風藤さんは松原さんおすすめのアイドルを見に連れてこられたと言う設定らしい。松原さんがギターがすごいとか設定を乗っけたので、着ていたジャージをギターに見立てて出てくる金子さん(必死でギターを探していたが、風藤さんが「あ、出てくる!」と言ってしまったのであわてて代用)。いつも2人で見にきてくれて……とか設定ふわふわ(笑)。
一緒に歌おうと言って松原さんをステージに上げる金子さん。風藤さんは選ばれなくて心底ほっとして崩れ落ちそうになってた。松原さんのリクエストで「ゴキブリ’96」だったかな。それを松原さんが歌う。触覚が2本あってまっすぐだけどもうすぐソバージュをかける〜とかなんとか。
歌が途切れたところで風藤さんがやおら立ち上がって「こうして2人は世界的アーティストになったのでした!」でオチ。新妻さん曰わく「途中で風藤さんの目がキラーンってなった!」「風:CD買って帰ろう、と悩んだ」「風:終わってからの膝の震えがハンパない」
オチも見事だったけど、コントの入りというか設定を作って説明するのがあまりにうまかったので、そういえば風松ってもとはと言えば両方コント師だったのを思い出した。なんで漫才師になったのかとか、知らないなぁそういえば。


6組目
佐々木=ササキング
設定:宇宙人(コント)
最後ピンネタ見たくないですかー?の問いかけでくじ引いたらさっさん。ものすごい仏頂面で出てくる。名前は?と聞かれてそりゃササキングでしょうと。大怪我しながら2回も頑張っておられた。
もうあたらないからと安心して出てきた永沢さんとちゅうえいがさっさんに、「俺らがやりたいくらいだよー」とヤジを飛ばしてさっさんにじとーっと見られる→2人で後ろ向いて天井を指差しながら喋る、のくだりが楽しすぎた。さっさんがキレて○○円でやる仕事じゃない!って言ってたけど、ほんと4倍くらいあげたいよ……。


シャッフルを見ると、皆さんの腕前に毎度感服する。ネタだと腕がありすぎるように見えない仕組みになってるんだろうな。
今回は縦列漫才というあまりにあからさまに新しいシステムが開発されてしまったけど(笑)、そうでなくとも毎回何か、新しい発見というかこれはこの先のライブでのおもしろいことにつながるんじゃないの?という萌芽が見えて、このライブはほんとに見逃せない。
あと、このライブは前回・今回と認定漫才師率がえらく高い。たまたまかもしれないけど、そのせいか、THE MANZAI後の漫才、というものをときどき感じながら見ていた。もっとも顕著なのはハマカーンだけど、流れ星や、逆に全く変わらないエルシャラと風松も。
THE MANZAIの直後、超若手にHi-Hiの亜流がたくさん出てくるだろうなと思ってはいた。中堅以上がネタの傾向を変えてくるのはそれとはわけが違う。なにしろおもしろくできてしまう。
4分で売れたHi-Hiを見て、「そこに市場がある」と思うか、「そこのニーズはもう満たされた」と見るかは、演者と観客で違ってくるのかなと思う。
ただ、ハマカーンのところにも書いたけれど今はそれでどうこういう段階ではないのだと思う。(浅草はまた別として)東京の漫才の傾向は変わるだろうし、しばらくはその潮目さえ安定しないだろう。はやくても最初に結果が出るのは、次のTHE MANZAIだろうし、その間にもし大きな賞レースでもあればまた変わるかもしれない。
観客なのだから、それを恐れるのではなく楽しむべきだ。どう変わるのか、どんなおもしろいものが見られるのか、わくわくと。ファンだとどうしても心配してしまうので、観客に徹したい。それがむつかしい。みんな大好きよ。


大げさに言うならば私はひとつの文化の節目を見ているのかもしれない。そして、同時代にいるものの特権として、文化を変えようとするほどの力の発端が、たった20円の電車賃の不足であることを知っている*1
あとから文化史として「THE MANZAI以降の東京漫才」を俯瞰する人がいたとしても、絶対こんなことわかんないんだぜ。

*1:2012/2/10 磁石トークライブ「フタリシャベリ17」より