二日坊主

トップリード単独ライブ「二日坊主」
11/4 19:00
11/5 14:30 18:30
笹塚ファクトリー


去年DVDDVDと叫び続けた甲斐があったのか、今回はすでにDVDの発売が決まっていました。それまで内容が知りたくないという人は以下を読まないでください。ネタバレです。


去年が「イッピキムスメ」今年が「二日坊主」。和賀さんが去年「1、2と続けていけるように1がつくタイトルにした」と仰っていたとおりの、第2回単独ライブ。
タイトルを聞いたとき、「一姫二太郎だねぇ」と思ったのですが、それが冗談でも何でもなく、ほんとにふたりのあいだの愛息のような、思いまんたんの作品でした。


今回は、お笑いコンビ「二日坊主」の片割れの和賀さんと、そのマネージャーである新妻さんが、「二日坊主単独ライブ」の全通しリハをやるというのが、構成の大枠。和賀さんの相方は、長期の海外ロケから単独ライブの当日であるまさに今日帰ってくる予定。要するに我々は、二日坊主のリハを見ることになります。
一本目の後の幕間ブイで二日坊主・和賀さんの10月のスケジュールが紹介され、その後の幕間ブイはその仕事現場やマネージャーである新妻さんに密着、そこで使われたキーワードが、そのあとのネタのタイトルになっているという仕掛けがもうひとつ。
とはいえ、「単独ライブのリハという体の単独ライブ」を見ているので、こんがらがったりはせず。すっと入っていけました。
実は「タバコ」の次のVTRから「嘘」までの順序が自信ない……。VTRとネタのセットはあってるはずなんですが。

  • プロローグ
    • OP
  • 役立たず
    • 二日坊主和賀10月スケジュール
  • タバコ
    • ファッション誌「ラブ・ジャンクション」取材
  • ラヴジャンクション
    • 新妻密着渋谷→お台場
  • ため息
  • おっぱい
    • 広島営業の朝
    • バラエティ「ワン!ワン!ワン!」
  • 犬が嫌い
    • エンドロール
  • エピローグ

プロローグ

和賀さんからリハの代役に指名された新妻さんは、最初、いやがって若手を呼ぼうとします。それが
初日:六六三六
2回目:高橋小形
千秋楽:ぐりんぴーす
でした。初日にいきなり「ろくろくー!」と呼んじゃって笑ったのが3人くらいしかいなかったせいか、2回目からは最初に「若手の子ー!」をつけてました。完全自分用覚書。

役立たず

ふたりともサラリーマンスーツで、上司である和賀さんはメガネ着用。黒に近い焦げ茶のセルフレーム。勢いと動きと伏線回収、いかにもトップリードらしいコント。衣装のせいで見た目は地味だけど(笑)。
最後、一言ずつでやりとりするところでいきなり演技力を見せつけられる。トップリードの地力って、あまりに当たり前すぎて忘れそうになるけど、ほんとにすごいって改めて気づきました。

タバコ

隣同士に住むホタル族のふたり。パジャマ着用。和賀さんはこないだの「確認作業」のときと同じパジャマですね。これ似合ってると思うわー紺色の。
韓国語がポイントに使われていて、そう言えば「イッピキムスメ」では「蛇と写真を撮ろう」がベトナム語だったなーと思いながら見ていました。

ラヴジャンクション

これ今回でいちばん好きなネタ!と思ったら旧ネタだったらしく、No.53だったと教えて頂きました。普通の白シャツの襟を立てて大げさなサングラスをして出てくるふたり。ラヴジャンクションのラストコンサートらしい。
あああこれどこまで言って良いものやら! すげー言いたいけど設定言うのはもったいないよなー! もうとにかくふりきってるし、あのブリッジでほんと爆笑した。実は「イッピキムスメ」が名作過ぎたせいか、ちょっと緊張しながら見てたんですが、このネタで手を叩いて笑って、ここからはもう楽しむばっかりでした。
〆のせいで、あれ、これどこまでが設定だった?とまたわからなくなる。単純に笑えて、がっつりした作り込み。もーとにかく大好き! また見たい!
去年の単独でも、「待ち合わせ」がすごく好きだと思ったんだよなぁ。旧ネタも良いのいっぱいあるんだなー。

ため息

今回のライブの中で、一番どストライクに「良い話」。私はコントで良い話をされるのがほんっとに苦手で、逃げ出したくなるくらいなんだけどトップリードだと大丈夫なんだよなぁ。なんでだろう。
たぶん、和賀さんがあんまり「良い話」を信用しないタチだと思うんですよ。なんとなく。でも、その和賀さんが、真っ正面から「良い話」を受け止めて演じきるから、こっちが照れる暇もなく納得させられてしまうのかな。
あと、感動から笑いに持って行くタイミングが上手い。「イッピキムスメ」EDでは和賀さんのひとことがそれだったけど、今回は新妻さんのオチ。そのときの和賀さんの表情がまたいいんだ!

おっぱい

普段暗転多用のネタは苦手なんですが、単独だと集中してるせいか気にならなかったなぁ。たぶん、新妻さんが、和賀さんにやらせたいことをやったネタなのかな(笑)。でも、初回はにんにんが照れちゃって和賀さんに「最後ちょっと照れたろ」と言われてました(笑)。
千秋楽では和賀さんのアドリブが入り、それをにんにんもやりきって和賀さんから「よくできました」と言われてました。良かったね、にんにん!

きました女装ネター!!! にんにんがワンピースで出てきた瞬間にだだ上がりの私のテンションなんなの(笑)。新妻さんが「あなた」って言ってたからたぶん若夫婦かな。嘘をつく妻と嘘を暴く夫。途中、和賀さんが「楽しくなってきた」って言うところがあって、その言い方がまるでアドリブかと思うほど自然で楽しそうで、こういうところが全体の幸福なてざわりに通じているのかなぁ。
オチは風松ファンとしておおっと思うところもあり(エンドロールとの合わせ技)。良いネタだったー。

犬が嫌い

犬が嫌いな和賀さんが、友達の飼い犬「ラッキー」を一ヶ月預かることになり……。言ってしまいますが、ラッキーは着ぐるみを着た新妻さんです。
いやもう最初見たときは「これがあったか……!」と思いました。ええもう何度目か。彼女も妻も見合い相手ゲイも同僚も幼馴染みも上司と部下もやって、もうやり尽くしたかと思った関係性に、まだ「飼う/飼われる」があったのかと。いやはや。新妻さんの底なしの愛の深淵を覗いたかのようで、ちょっと怖くもなりましたよ。
途中の静止画っぽい演出がすごく好きでした。絵になるふたり。あと、ツンデレ和賀さんの台詞のひとつひとつがもうおかしくて。丁寧に考えてあるなぁ。さすがリアリティのお人。
たぶんこのネタ、犬を飼ったことがある人は泣いてしまうのではないかと。犬飼っている友人の、犬関連のネタに対する涙腺の弱さをよく知っているので。
きっとこうなるだろうなと思った展開で、やっぱりそうなって、でもちっとも陳腐にならない。最後の最後、和賀さんの表情が絵に描いたような「至福」の表情で、あぁ良いもの見たなぁって素直に思えるのでした。


そしてエピローグ。ここからほんとにネタバレですよー。といっても肝心のことを書くのはやっぱりもったいなくてできないのだけど、まぁネタバレですよ。
リハが終わって、二日坊主和賀さんとマネージャー新妻さんが会話し始める。その中に、無理なくこれまでのネタのタイトルが差し挟まれていって、ああ、こういうつなぎかたにしたのかぁと感心する。登場人物を数珠つなぎにするとかも、よく見るけど、今回はこの軽やかさがすごく良かった。
新妻さんが、「夢を諦めないことが大事」と言うことを、ちょっと唐突に言った。前回の単独でも、ちょっと唐突に「見てくれてる人はいるんだな!」と言った。おそらくは、芸人トップリード新妻の本音。
トップリードほどの演技力があったら、それこそ完全なる他人を演じるフィクションもできてしまうと思う。でも彼らは芸人だから。自分自身を演じる芸人だから、多彩なキャラクターを演じながら自分自身のいろんな面を次々取り出してくる。そしてたまに、本音をこぼす。
どんなに精巧にできていても、素材感がなければ味気ない。トップリードはその逆で、どんなに作り込んでも、トップリードの幸福感を放ち続ける。
単独を見て、彼らの尺は2時間だと思った。4分ネタでは感じることがある忙しなさや理が勝ちすぎる感じが、単独だと一切なかった。すべて彼らの持ち味だと思えた。
コンスタントに、もっと頻繁に、単独をやって欲しいなぁ。良いところを強め、彼らを好きな人に一番濃いところを見せて欲しい。そして彼らを知らない人をも、一発で虜にしてしまうような。月笑1位のご褒美である意味が全然ない。彼らの単独は目標ではなく、活動であり手段でありライフワークであるべきだ。彼らは単独をやらなきゃいけない人たちだ。


千秋楽の最後のご挨拶で、和賀さんが「人ひとりが覚えられる台詞量じゃない!」と言っていた(笑)。それを受けて新妻さんが、「今回は和賀さんがメインの構成にしましたからねー」と言って、ああ、新妻さんが見たい和賀さんを書いたんだろうなーと思った。新妻さんにとって和賀さんは、どれほど極上の素材なんだろう。新妻さんが書いたネタを演じる和賀さんは、いつもあまりに魅力的なので、推して知るべしか。
そんな和賀さんが千秋楽で、台詞の間に「ネタを書ける相方が一番だ」と差し挟んだ(初回でもちょっと言い回しが違ったけど言ってた)。良かったね、にんにん良かったねぇ。でも、そんなにんにんが同じ立場で和賀さんと並び立つ役を演じる単独も見てみたい。にんにんは、自身に地味な役割を充てることが多いけど、とことん陽の人だと思うんだ。あー見たいトップリードがたくさんいるよ。


今回の設定で、ただひとつ残念だなと思ったのは、和賀さんに相方がいることだった。和賀さんの相方は新妻さんしか、新妻さんの相方は和賀さんしか、いないと思っているのに、別の人がいるなんて寂しい。
でも、最後の最後、大きな仕掛けでそれすら覆してくれた。
彼らは彼らでしかなかった。
それがとても嬉しかった。