見せたがり女を見たがる女

柳原可奈子初単独ライブ「見せたがり女」
時事通信ホール 7/18 15:30


意外なことに初の単独ライブ。
私が月笑に行くようになった2009年には、柳原さんはすでに自社ゲスト扱いだったので、それ以前を知らない。想像だけど、事務所ライブ(その頃は太田プロNEW WAVE LIVEですかね)の投票で優勝して単独を開く前に売れてしまったのかなと思っている。wikiによると柳原さんのブレイクは2007年らしい。


月笑に行き始めてからずっと彼女の単独を見てみたかった。勇んでファンクラブの優先で申し込んだら、最前列しかも掛け値なしのど真ん中というどえらい席を頂いてしまった。そんな席でメモ取るわけにもいかず、記憶違いや忘れている部分も多々ありそうなのだけど感想を。
はっきりオチに触れたりはしていませんが、ブログの記述から見て、DVDが発売される可能性が高そうなので、予備知識なしで見たい方は読まないでください。

本ネタ

占い師(OP)/ご想像にお任せします女/休ませてぇ〜女/今だけは会いたくない女/ブログ女/声だけは良い女/知らない?女/テレビ業界の女(順不同)
OPを除いたら本ネタは7本。うち、たぶん新ネタなのは

  • ご想像にお任せします女
  • 声だけは良い女
  • テレビ業界の女

の3本。私が見たことないだけかもしれないけれど、少なくともこの2年の月笑ではかけてない。
最近月笑ではありネタをかけていて、「新ネタは単独用にとっとくのかな」と思ってたら真逆で、単独に向けての調整だった模様。ブログ女と、生田さん(その3・新人教育編)はつい最近見た記憶がある。
生田さんは大好きなので嬉しかったなー。しかも、その2で使われてた1番好きなキラーワードを持ってきてた! でもあんまりどかんといってなかったな……なぜだあれおもしろいのに……。
演技のすばらしさとか、観察眼の鋭さとか、すべてが隙のない完成度だったのは言うまでもない。いちいち書くのもおかしいくらい、いつも通りの「最高」だった。

幕間映像

なにしろキャラクターごとに衣装もメイクも変えるので、暗転時間が長くなる。その、幕間の映像がすさまじかった。

YANATUBE
YOUTUBEのロゴを模した、動画サイトの映像が流れる。その中で、これまでの形態模写とは一線を画す、はっきりとした「物まね」を披露した。こーれがすごかった! とくに北斗晶! 顔がそっっっっっっくり! 全然似てないじゃないかといわれそうだけど、似てる度合いで言ったら顔>声≧喋り方ってくらい顔がそっくり! びっくりした。そのあとも、「歌うように喋る不動産屋」とか、「居酒屋ですべる女」などとともにいくつかの物まねが流れるのだけどこれがまあ、なんて太田プロらしい物まねだろうと心底楽しかった。松居一代国生さゆりへの毒が絶妙! 松村邦洋さんの物まねを思い出した。YANATUBEは計3回くらい流れるのだけど、さいごの方はもうロゴが出るだけでお客さんが笑いだす始末で、まぁおもしろかった!「宮崎あおい 柳原可奈子」の検索ワードが打ち込まれるだけでも笑う(笑)。
DJ RIKACO
暗いステージにラジオが置かれ、RIKACOのゲストに柳原可奈子がゲストできた体。
やらせてTRY
おそらくはちゃんとメイクした「今だけは会いたくない女」が、「やってTRY」のパロディでロールキャベツを作る。ナレーターもたぶん本物? やってる間中の言うことも言い方も、まさにこの番組に出てきてた女の子そのもの! 完全に別人格だった。
北条マキ in 逃走中
北条マキ先生はどこに行ってもマイペース。こっちは逃走中という番組のパロディと言うより、ほんとに北条マキがゲストにいっちゃいました、という感じ。


終わってみて、意外だったのが、本ネタも映像も印象に残ったネタが全て「テレビ」か「テレビの中の人」のネタだったということだ。
新ネタの、3本中2本がそうだったせいもあるだろう。印象に残ったというのは完全に主観なので、柳原さんの意図がどうこうなんてのはもちろんわからない。


彼女の出世ネタは「ショップ店員」や「総武線の女子高生」など、ごく当たり前にその辺にいて、なんか変だと皆が思ってるけどそうはいえない市井の女の、憑依とも言えるレベルの形態模写だった。
(とわかったように書いているけれど、その頃私はお笑いに一切興味がなく、バラエティもほとんど見ていなかった。テレビで彼女を見かける度に思った、「あ、あの店員の真似する人だ」というなんとなくかつ代表的な印象で言っている。)
考えてみれば、うすぼんやりとした「ある集団のイメージ」を個人に落とし込む技術をもってすれば、特定のタレント、テレビでイメージを共有されている人の物まねはとっくにできたはずだ。でも今回初めて見た。しかも単なる真似だけでなく、絶妙な毒っ気を伴って。


最後のネタ、「テレビ業界の女」、言ってみれば、「テレビ」と「市井の女」の両方にまたがっている女、私は彼女が前髪流してる時点でもううまいなぁと思ってしまったのだけど、彼女が「工場見学のVTRを……」と言った時に、あ、と声が漏れそうになった。そこから怒涛のあの展開。少しの皮肉とともに、たった一言でそれとわからせてしまうあの話術は、箸の上げ下ろしひとつで「いるいるこういう女ー!」とひざを打たせる技術と地続きだった。


彼女のネタが月笑での楽しみのひとつになっている割に、私はレッドシアターが終わってから、彼女目当てでバラエティを見ると言うことがない。失礼ながら、彼女でなくてはならない役割が見出せないのだ。くもみはたまに見ていた。
そんな風にして私が見過ごしている間に、彼女は牙を研いでいたのかもしれない。テレビの中から、テレビを見据えて。
そんな彼女のネタを今、映す機会がテレビにないというのは、ほかならぬテレビにとって皮肉なものだ。


でもきっと北斗晶の物まねは、すぐにテレビで見ることになると思う。そのくらい、誰もほっとかなそうな、キャッチーで売れそうな、なにより見事な芸だった。