トークライブにて、マシンガンズの印象

テレビで視ていたとき、私はご多分に漏れず、マシンガンズが嫌いだった。マシンガンズがというか、怒鳴る人が嫌いなのだ。前の会社を辞めた理由の3割が、「すぐ怒鳴る専務がいる」だったくらいだ。
だけど、太田プロライブで見ていっぺんで好きになってしまった。そのときやったのが、あの「YAHOO知恵袋」ネタだった。
あのネタで、マシンガンズは実際に被害に遭っていて、被害に遭っているのはマシンガンズだけだ。だから誰も共感なんてできないはずなのに、涙が出るほど笑った。共感なんかなくても、マシンガンズの怒りの迫力に首根っこ掴まれて笑わされた。それでも一抹の「わかるわー」が残ったのは、マシンガンズに関係なくYAHOO知恵袋を見たときに思う「これネットで聞くようなことかぁ?」という感覚によるものだろう。


最近マシンガンズがやっているキレ漫才の題材は、大体「時事ネタ」と言えるんだろう。ただ、政治ネタやワイドショーネタもあれば、手相やパワースポットと言った身近な物も含まれる。
トークライブを聴きながら思ったのは、「時事ネタ」と「あるあるネタ」は境界が曖昧な割に決定的に違うものだ、ということだった。
手相やパワースポットにはまるうざったい女のネタに「いるわー、そういうの」というのは広義の「あるある」だろう。でも、政治やワイドショーネタに共感は必要ないのかも知れないと、有吉氏の快刀乱麻ぶりを見て思った。共感より、知らない視点、思いも寄らない角度、経験しようのない経験に基づく主観、こういうものに感心して笑わされる。「時事ネタ」で共感を得ようとすると、通り一遍の表面的な話になってしまう危険がある。


マシンガンズが以前ある政治家にものすごくぞんざいに扱われて腹が立った話をした。こういう経験を重ねて、ネタに昇華したら、おそらく、共感なんか飛び越えたところのキレ漫才になるんだろう。私的で、有機的で、個人的で、誰にも文句の付けられない怒りで圧倒して笑わせるような。


そう思ったのは、有吉氏の原動力であろう「恨み」が、ものすごくパーソナルなものだったからだ。例えば、今現在のグラビアアイドルが嫌いな理由。かつてどん底だったときに当時のグラビアアイドルに見下されたので、「孫子の代までたたってやる」という気持ちで、今のグラビアアイドルも嫌いなのだそうだ。今のグラビアアイドルが当時を知ってるとか知らないとかどうでも良いらしい。
ほとんど逆恨みなのに、あまりに揺るぎないもんだからうっかり笑って納得してしまう。すべてそうなのだと思う。有吉氏の場合、どんな目にあったのか、ということが、ある世代のテレビ好きにとっては国民的合意の勢いで浸透しているから、強い、というのもあるが、ここまではっきりきっぱりしていると、とてもこちらが口を挟めるスキなんかない。


有吉氏が、マシンガンズに「どこをターゲットにしていくのか」と聞いた。マシンガンズは「同世代の男」と答えた。
有吉氏の著作を読んだばかりだった(正確に言えばライブに間に合うようその日の昼に読み終わった)ので、すぐに有吉氏が同じように同世代の男にターゲットを絞ったという部分を思い起こした。「同世代の男、一点集中でいこう!」と、内Pで裸になってリアクション芸に邁進したと。走り込みをやって体を作って、上島さんと向き合ったという行。
それが念頭にあったから、有吉氏がマシンガンズに「そんなこと言って目の前の女の受けをとろうとしてるんじゃないの」と言ったのは合点がいった。


これを聞いて、ちょっと申し訳ないなーと思ってしまった。太田プロライブでははっきりいって女の共感を得るネタがわかりやすく票を集めるからである。
やさしい雨がはじめて「堕天使系男子」をやったときはかなり順位を上げたし、トップリードは、まぁ、コンスタントに上位だけど、「コンパのトイレタイム」のオチの後の「かわいい……」というさざ波のような感嘆をよく覚えている。数ヶ月前マシンガンズが久々に1位を獲ったときも、最近の流行を「OL」でパッケージしたネタだった。
太田プロライブがすべてではないけど、あそこでおろしたネタをバラして再構成して他のライブでやったりレッカペでやったりすると、どうしても女向けのネタが多くなるんじゃないかと思う。まぁライブはどこも女の方が圧倒的に多いけど。


トークライブの内容は全部マシンガンズが考えたというけれど、マシンガンズが有吉氏になにかしてくれと言ったのは、最後の「有吉会を作りませんか」だけだった。だから、このライブが具体的にマシンガンズのきっかけになったかどうかはわからない。
ライブ後に西堀氏がインジョンのすぎさんにマジ説教を喰らったそうなので、どっちかというとそっちの方が直接的なきっかけになりそうな気もするけど(笑)。
もしもマシンガンズがこれから先の太田プロライブで、女性の共感をかなぐり捨てた渾身のネタで笑わせてくれたら、惜しみなく拍手を送って、アンケートで○を付ける。600分の1程度の重さのことだけど、その日が楽しみだ。