ふたりでひとつ

オードリーのANNがスペシャルウィークに選んだ企画は、「10年目のプロポーズ」。春日氏のご両親に許しを得ないままお笑いの道にひきずりこんだことをいまだに気に病む若林氏が、ご両親に「息子さんを僕にください」というのだと。
そもそもは企画ありきではなく、発端は何気ない若林氏の一言だったと記憶している。それをここまでおおごとにするあたり、ラジオってほんとうに悪ノリの文化だ。春日氏のテンションがまだ企画向きのそれに聞こえる一方、若林氏が終始ネタとも嫌々とも乗り気ともつかないテンションで、淡々と進行していて(特に人形焼きの行のあたり)、企画の形を借りても、結構ほんとにできて良かったことなのかもしれないと思うまでになったが、真意はいまだによくわからない。わかる必要もないが。
全体を結婚になぞらえるあたり、つっこみどころは多々あれど、若林氏の口から「最高の相方だと思ってます」という言葉を、聞けた、というか、聞く機会を得ることができた、もっと言えば公明正大に聞くことを許された、という1点で、ファンとしては値千金のありがたい企画だった。
最高の相方だと、思っているだろう、そりゃそうだ。そしてそれはきっとオードリーだけじゃない。お笑いを見始めて日の浅い私がリアルタイムで知っているのは「塙さんが世界で一番おもしろいボケだと思って」いるナイツ土屋氏くらいだけど、芸人さんの相方自慢エピソードはちょっとネットを漁るだけで枚挙に暇がない。
売れている組はもちろん、売れていなくても、自分たちがおもしろいと信じているコンビは、お互いを最高で、唯一無二で、運命の相手だと思っている。


最後の最後までおちゃらけたように「CAN YOU CELEBRATE?」を流して、ご挨拶のハイライトを再編集したジングルに笑っていた。でも、その後の若林春日両氏が声を合わせた「オードリーのオールナイトニッポン」に不覚にもぐっと来てしまった。ただのタイトルコールだけど、これは、ふたりが「オードリー」というひとつの名前でもって勝ち取ったお仕事の高らかな宣言だ。そう思ったらぐっと来てしまった。そして、このひとことで、悪ノリも本気も公も私も、全部ひっくるめて「番組」として収拾をつけて、きれいに作品としてまとめてしまった。チーム付け焼き刃とオードリーの見事な仕事になった。


結局私は、小学生の時藤子不二雄先生に生まれて初めて「尊敬」という感情を持って以来、「ふたりでひとつの名前を名乗ってひとつの仕事をしている人」に無条件で弱いのだ。
仲良しエピソードは大好きだけどほのぼのするまでだし、(ネタにしても)結婚だ夫婦だと言われた所で笑っていられる。それが仕事となると途端に胸に迫るものがあるのは何でだろう。
ふたりで完結していないからかな。ふたりで始めたことが、周囲に認められ周囲を巻き込んだ結果が作品であり仕事だからだろうか。
まだよくわからないけど、この世のすべてのふたり組が、選んだ相手と共にずっと良い仕事をできるように祈らずにはいられない。あなたたちを尊敬します。