はじめてみた

M-1ツアースペシャル2009 福島市公会堂
7/5 12:00/15:30


オードリーをと言うかお笑いを見るようになって三ヶ月。もうどうしてもあの「ズレ漫才」を生で見たくて見たくて、「アー生でオードリーのネタが見られるンなら地方でも営業でも行っちゃうんだけどナァ」とサザエさん風に呟いていたら存外はやく機会があった。ちなみにオードリーが出るのはツアー中大阪と福島で、大阪だったらナイツも見られるし3回だしたいへん魅力的でしたが、前の週も大阪行ってるしいかんせんお笑い本拠地は激戦だろうしで福島に。後単純に「近い!」。ええもう近所よ近所。


奇しくも「生で観たいお笑いライブ」というランキングでオードリーが一位だったようで。ネタがどうこう以前に「テレビに出てる人を生で見られてだいこうふん」の坩堝のどまんなかから帰ってきたばかりだとあんま素直に見られないランキングではあるなー、と……。生で観たいのは何を観たいのかと言う話。最初に連れてってもらったラママがきじゅんなので、あんなふうに「ネタを見に来た」人のただ中で観るのと、営業で観るのではまたぜんぜん別物なんだろうなとは思う。
ま、しかしトーシロがぜいたくを言っている場合ではないのです。


他の地方と同じではないだろうけどいちおうネタバレなので隠します。完全に自分の思い出し用なので、長い割に伝わらないとは思います。てかお笑いの感想ってどう書けば良いのかイマイチわからん……。


前MC、前半4組、中MC、後半4組、最後全員集合して終わり。オードリーの出番は1部は前半のトリで、2部は2組目。ネタは「転校生」→「親孝行」。持ち時間は自己申告で12分だそう。
ちなみに1部と2部でまったくネタが同じだったのはオードリー、U字工事ザ・パンチ、ものいいで、違ったのが笑い飯、あとたぶんダイアンも違ったような(うろ覚え)。ノンスタは前半同じ(安心せい峰打ちじゃ)で、後半は違った。POISON GIRL BANDは……すまんどっちのネタも覚えてない……。


先にざっくり全体の印象を書くと、オードリー、U字工事、ノンスタは圧倒的に笑いの量が多かった。お客さんの反応という意味ではなく(すべてのコンビでお客さんはよく笑ってたので)、笑う箇所が単純に多い。他のコンビもM-1用の4分のネタならもっと多いんだろうけど、この3組は15分ちかくてもとにかくボケとツッコミ両方でスキあらば笑わせる。ノンスタはM-1の決勝と比べれば少なかったけど(セルフツッコミが少ない分だろう。太ももたたいたのは2回)。
ダイアンと笑い飯は逆に笑わせず聞かせる部分もあって、特に笑い飯がおもしろかった。「鳥人」とか、最後はなんでその話になったのか忘れるくらい繰り返すんだけどじわじわじわじわ面白くなってきて、これ時間長ければ長いほどおもしろいんじゃないかと思うくらい。


オードリーのこと。客席のすさまじいワーキャー具合は省略(笑)。でもひとつだけ言いたい。モールつけて(大きさはみ出して)頭の上に上げてる時点でそれをうちわとは認 め な い か ら!
ほぼすべてのコンビが、ノンスタすらも、「僕らのこと知ってるひとー?」と営業のお約束的に語りかけてたんだけど(いじるというほどでもない)、オードリーはやらなかった。大正解だと思った(収拾つかんだろう)。
ネタの方はとにかく時間が長いのでお決まりのパターンはほぼ見られたー。満足。
ちなみにつかみは1部が「今日集まったのは春日の体目当てですか?」「命目当てだと助かるんですけども」で、2部が「生の春日を目に焼き付けて帰ってください」「帰ったらすぐアイボンした方が良いと思います」。
「お前それ本気で……」の後は両部とも「本気で言ってたらベストとネクタイの色合わせてこないだろ」(若氏のネクタイはDSピンクと黒の細い斜め縞)。オチは両部「本気で言ってたら12分も漫才しないだろ……笑えよ!」


驚いたのはとにかくアドリブが多いこと。これもこれもアドリブかと。同じネタやってくれなきゃとてもわからなかった。しかも結構大幅に逸れて戻ってくるのに時間がかかることもしばしば。
一番顕著だったのは、「近い」からの流れ。
両部とも春氏の立ち位置が異様に若氏に近くて、ずっと春氏の胸と若氏の肩が当たってるくらい近かった(考えてみるとあれで背中叩くのむつかしくないんだろうか)。で、若氏が「お前今日近いな! 福島くると近くなるのか!」の後が、1部では「南に行ったら離れるのか」「近い」で終わりだったんだけど2部はその後さらに
若:どこ行ったら離れるんだよ
春:……
若:鼻息しか聞こえてこねぇよ!
(ネタに戻った後)
春:台湾
若:台湾で漫才やるっておかしいだろ!
  (あまり受けなかったので)台湾イマイチだな!
春:お前がなんとかしろよ!
若:できねぇよ! 台湾なんとかできたら優勝できてるだろ!
春:確かにお前には腕がない
若:お前もだよ! お前に腕がなくて困ってる人いるぞ!
  事務所で会議になったらしいぞお前のアドリブ能力どうするかって
とまぁふくらむふくらむ。あ、当然ですが脳内テープ起こしなので細かい言い回しは捏造です。


あと、2部はアドリブが多すぎたのか若氏がネタを忘れかけたりして
若:ネタ忘れたじゃねぇか!
春:都議選で自民党がやばいって話じゃないか
若:そんな時事ネタやらないだろう 爆笑問題さんじゃないんだから
春:俺は爆笑問題の山岡さんじゃないのか
若:山岡さんて誰だよ! 太田さんと田中さんだろ! 余計なこというな!
春:申し訳ない殺さないでください! あれだけはやめてください
若:あれだけってなんだよ裏でひどいことしてるみたいじゃねぇか
春:テクノカットだけは
若:自分でやったんだろ2年ぐらい前に! なんでだろうと思ったよ
まさかここから「あれだけはやめてください」になるとは! これは完全に1部はなかったはず。たぶん。メモ書いたのが2部後なのでごっちゃになってて自信がないんだよね……。見てる間は手ぇたたいて笑ってて、書くどころじゃなくて。


細かい違いはいくらでもあって、たとえば1部では「かめはめ波」だったのが2部は「ギャリック砲」とか。
1部では「郷ひろみって可能性もあるだろ!」があった……はず。わー決勝とおんなじだーと思ったからたぶん。2部も郷ひろみがあったかは忘れたけど、若氏がアロハの指のマークをやって、「誰に電話してるんだよ!」から東急ハンズが東京にしかないんじゃないのかと言う流れは2部しかなかった。
うーんアドリブと言うと「その場で作ってる」と言うニュアンスに聞こえてしまうからちょっと違うような気がするなぁ。けっしてでたらめに作るのではない、無数にある「ズレ漫才」のパーツの中からどれをチョイスするのかが春氏まかせ、と言う意味でのアドリブ。若氏がそれに対応した返しをすることによってすべてのピースがズレ漫才として機能するから、どれを選んでもできる絵がオードリーになる。なるほどこれは確かに噛んだりしてもどこまでがネタかわからないわ。失敗しても若氏がズレ漫才としての返しをすればそれで成立しちゃうんだもの。決勝でのキセキの噛み方とその回収はこれだったのかー。


あと特筆すべきは、全部2部だなぁ。単に後で見たほうが印象残ってるだけかもしれないけど。


最初、「春日」よりも「若林」の声のほうが大きかったらしく、若氏がそれに触れたら春氏が出てきたのと同じスピードでゆっくり上手袖に戻ろうとした(笑)。
若:ひとこともしゃべってないですけど
春:おもしろくなかった
若:オードリーとしてもはじめてのことで戸惑っております


途中の妖怪みたいにグラマラスなスチュワーデスさんを表現している(らしい)箇所を若氏が放置して、なんで放置するんだと抗議しようとした春氏といい加減にしろと突っ込もうとした若氏のツッコミがまったく同時にそれぞれの背中と額に入ったこととか(笑)。ちなみに最後の「シュシュシュシュ」はダメだけど他は良いらしい。ぜんぜん伝わんないけどとりあえず若氏それ甘いんじゃと思ったことだけ書いておく(笑)。


アドリブが多いのか我慢しきれず終盤になって
若:お前今日なんなんだよ
春:楽しい   福島   楽しい
若:なんで人造人間みたいになってるんだよ


最後に集合するのは両部あったけどオードリーは1部のみ。2部は仕事の都合で先に出たそうで、相変わらず忙しいんだなー。
1部の最後はいちばん上手に若氏・春氏の順で立っていたため必然的にご挨拶は春氏がトリに。最初誰かが舞台の中央あたりで胸を張っていたのを笑った以外は他の芸人さんとはあまりからまず、若氏は主に自分のつま先を見ていた(笑)。とちゅう一回春氏にこそこそっとなんか話しかけて、しばらくしてから特に話してもいないのに若氏だけが笑ってるからなんでだろうと思ってたらトリになると気づいた春氏がずーっと咳払いをしていたそうで、それがおかしかったらしい。
春氏がDVDの宣伝をして、若氏が咳払いのことと「うちの相方普通のことしかしゃべってないです」と言うようなことを言って終了。緞帳が下りる前に真っ先にはけようとするも他の人が手を振っているのに気づいて半身振り向いて手を振って幕。


ネタ終わりではけるときも、春氏はゆっくーり帰るんだね。こんなこともはじめて知った。
楽しかったなー。楽しかったなー。テレビサイズだと脇道に逸れようもないズレ漫才は、確かに「春日いらんねや」かもしれないけど、生だとこんなに春氏がキーになるんだなー。お約束の応酬なのに、紛うことなき即興のかけあい。これをふまえてDVDを視るのがほんとに楽しみ。
学生時分にオンバト視てたときは、ネタ中に笑っちゃう漫才師が大嫌いだった。笑わせるんだろ笑うなよーと。オードリーの場合は、春氏にこらえきれず笑っちゃう若氏がどうにも楽しく幸せな気分にさせるんだけど、これはオードリーのちからなのか、私が年とって丸くなったのか。1部でなんでだったか口を押さえて顔をくしゃくしゃにしてしまった若氏がほんとに楽しそうだった。それをいちばん近くで見る春氏も楽しそうだった。