東京の夜

POW!!! 〜鳴らすよメーデー〜 vol.2
下北沢club Que 19:00


そうとなれば行くという。ワンマンしか行かなくなっていたのに現金ですね。
ANATAKIKOUに行くのが2年ぶりくらいなので知らない曲もあってセットリストはあげられないのですが*1、いきなりまあきさん(今日はこの呼び方で)が足の上にギターを落として大笑いからスタート。ほくちゃま(こちらも)が「とくに言うこともないんですが」とおっしゃってからはじめた最初の曲が「黄色い道」。
音が鳴る前から笑って、音が鳴り始めたときからもう楽しくてこうふくで、それでもサビのところで涙がふわっと浮かんで、いかんいかん今日は楽しみにきたんだから泣いちゃいかんのだよと我慢した。そこからずっとにこにこしてるんだけど目は潤みっぱなしと言うひじょーにあやしい人になっていた。
落っことしたせいなのか、一曲終わってから入念にチューニングのまあきさん。こんなに静かにチューニング待ってもらったのはじめて、ざわざわしてて良いのよとまあきさん。昨日はチューニング多かった気がする。


楽しくって楽しくって、メンバーもみなぢさんもよく笑っていて、晴れ晴れとした顔をしていて、こちらも笑いっぱなしでした。
とちゅう、まあきさんが「今日はほくちゃまの曲たくさんやるから」とおっしゃったときも、悲しいより、うんそうだよなぁと思った。「ほくちゃまの、いつもの新曲を」って紹介もおかしかった。


でも、「旅の別れ」は無理だった。私は初めてきいた曲でした。「明日にはもう会えないから 思い出に変えて」っておいー!と涙をこらえながら藤井さんを見たらもうくっしゃくしゃの顔してドラムを叩いてらして、いやわからない、ただいっしょうけんめい叩いていたからあんなに必死の形相だったのかも知れないけど、もうなー……。その表情を見たらもうダメで、ぼろぼろっとこぼれる涙をどうしようもなくてあわあわしながら、また、この曲がいい曲なんだなー。
CDになってない曲がいっぱいあるはずなんだけど、この曲が今いちばん手元にほしい。たぶんいつになっても聞くたびに昨日のことを思い出して泣くと思うけれど、この曲がほしい。


8年前にバンドを組んだ頃、まあきさんがほくちゃまの家に行った話。いちごをたらふくごちそうになった。まあきさんはまだほくちゃまに敬語を使っていた。そのときに「これからはMacの時代だからMacを買う」と言っていたほくちゃまは結局まだMacを買っていない。「こんなんだからずっと変わらなかった」と笑いながらほくちゃま。それをきいた藤井さんが大笑いして、ふつうなら手を叩いて笑うところをスティックを打ち合わせてしまったものだからそれがカウントでこの流れで始まるのかとびっくりしてしまったまあきさん。


最後に、まあきさんが「ちゃんと言いましょうよ」と振ってほくちゃまから脱退のご挨拶(しかし挨拶に入る前ひとしきり皆楽器で邪魔をする(笑))。またひとりで大阪からここにこられるように……と言うとまあきさんが「ソロなの?」と驚いたように。ほくちゃまがいやわからないよ、いっしょについてきてくれる人がいるかも、みたいなことを言うとまあきさんが「ギターぜひ俺に、あなたの曲どれだけアレンジしてるか」と。ほくちゃまも「そのことはこころの大事なところにしまってある」と。まあきさん最後まで「第一候補で」ともうれつアピール(笑)。
まあでもちゃんと最後はこの曲でみたいのがあるんですよとまあきさんが言って、はじまったのが「リリー」。はーんーそーくー……。しかもまあきさんが歌い出しの音をはずしたというか声がひっくり返っちゃって、そんなのみたことなかったからそりゃもう堪えられんよ。とちゅう藤井さんがなんでかしらないけど「あはは」と突然笑ったり、まあきさんが「どうしたどうしたー!」と煽ったりするもんだから、ちゃんと見ようと思ってたのにその時だけは顔を伏せて思いっきり泣きながら笑ってしまった。おかしいんだもの。悲しいし、寂しいのに、楽しいから、さぞかしひどい顔をしていただろう。


演奏中にものすごい笑顔で笑い合うのも、かけあいのようなギターの呼吸も、真剣な目配せも前に見たときのままで、そのひとつひとつがあんまりにまぶしくて泣きたかった。でもそれは、もうすぐ見られなくなってしまうから愛おしくて、尊くて、大切なんじゃない。それがただこうしてここにあることがあんまりにも奇跡的だから、愛おしくて、尊くて、大切だ。たった今。ANATAKIKOUほど良いバンドを楽しむのに、未来なんてわけのわからない要素を盛る必要なんかない。
ゆうべのANATAKIKOUはほんとうに素敵だった。楽しかった。魔法があった。それはこの先この形ではなくなってしまうのがわかっているからじゃない。


そんでおそらくは――ほんとに私のかってに思ったことですが――こんなにも素敵なANATAKIKOUが少しでも長く素敵であり続けられるようにと考え抜いた結果が、ほくちゃまの決断だったのかなぁと。みんながANATAKIKOUを大事に大事にしていることが、とにかく疑いようもなかったから。


木村さんの後に全員ステージに揃ってご挨拶だけ。藤井さんすでにできあがってたような……。ほくちゃまは「最強の素人になります」と言っていました。

*1:知っていてかつ覚えているのは、黄色い道、カリントボンボン、キューティフォン、甘い種の不思議、リリー