カゴツルベ

3/21 18:00  3/22 13:00 青山劇場


以下ネタバレです。


感想を言葉にするのがなー……むつかしいんだよね……。「チケ代分きっちり楽しませてもらった!」と言う感覚は確かにあるのだけど、「どっぷり浸りきった! まんぞく!」という感じはないんですよね。かといって不満かと言えば不満というほどのこともなく……。結構こころからのスタオベをしました。慣例としてではなく。
あのー、幕が開いて最初の感想が「……存外簡素だな」で、結局最後までそれが拭えず空間が気になる感じで進んでしまった。何しろ吉原だし、さいしょにジロウザエモンがその華やかさにびっくりするなら、こっちもびっくりするくらいのものを目の当たりにしないと世界に入っていけない。一言で言えばつかみでつかまれなかった。もっと極彩色でデコラティブでけれん味満載(イメージはニナミカ)の舞台(装置としてのそれ)だと思っていたせいなんだけど、なんでそう思ったんだろう、こないだここで観たIZOの大道具がすごかったからだろうかと考えたんだけど、まぁ結局パンフとフライヤーにひきずられたんだな、と言う結論に。パンフと本ちゃんが別物だというのはよくわかってるけど、あの完成度はひきずるよ! あのまんまうごいてくれたら、だいまんぞくだったんだけどなー。
でも観てるだけなのに最後は汗だくになって腹ぺこになった。芝居の持つエネルギーはほんとにすごかった。役者のみなさん(やっさんふくめて)の力量がすばらしくて、ほんと、「良い舞台」と言うより「良い芝居」だったと思います。もっと視覚で圧倒してくれたら、もっとがっつりのめり込めたと思うと、それが惜しい。なにしろこの涙もろい私が泣かなかった。


まぁきちんと舞台として鑑賞するならあのヤス風ダンスを最も問題視しなきゃいけないのかもですが、私にはあれに申し上げることがあるとすれば「感謝」のみです(きっぱり)。風間さんがおどったー! しかもあのやっさんにちゃんとついていけてんじゃん! まだまだいけんじゃん! てか身長ぴったりでほんとにシンメみたいー!
ええ大興奮でございますとも。風間さんて長い割に固定シンメいないんだよね……。司会者だったから(笑)。いいもんみたいいもんみたいいもんみた! あそこにチケ代全部でぜんぜん良いです。


やっさんは堂々としていて、楽しんでいて、危なげなく座長を務めていました。イントネーションがほんとに標準語でね! ちょっとのアクセントにおいてもただの一度も関西弁が出ませんでした。これはほんとにすごいと思った。
脇を固めてくださっているのが、ものすごい方ばかりなので、不遜な言い方になりますが、今の安田章大がぜんりょくを尽くすのにふさわしい大仕事でした。本気の芝居、身体能力の高さ、大箱座長としての責任、どれをとっても全身全霊で打ち込みむこう5年ひきずっても良いくらいの身の丈よりちょっとおおきめのお仕事。やっぱり男は仕事だね! 超えるべき山であり超えた後のやっさんを予感させるほんとうにすばらしいタイミングのすばらしいお仕事でした。


ほんで風間さん。贈られた花が放送作家と六本木の焼き肉屋からって、あんたが誰より舞台人ぽいよ……とロビーで脱力しました(笑)。いつもどーり、絶対安全剃刀とでも言いたいようなおつとめぶりでございました。
でも、風間さん、じょうずになったなぁと思いました。ここ最近のことではないけど、見始めた頃から比べて本当にうまくなった。
ジロウザエモンが出て行ってしまってそれを追う八つ橋を「え〜……」て言いながら見送るところ。台詞と間を使って、自分が思う通りの笑いを思うとおりのタイミングと長さで、観客から引き出していた。こないだのフライパンでも思ったことを思った。
観客も共演者も置いてけぼり!なことが一度や二度ではなかった人なので、こんなふうに客席を自在にわかせる姿には感銘を受けます。でもこの人がこんなに声低くなるとは思わなかったよね。


風間さんのお芝居に関しては、「蒲田で変わらなかったんだからこの先劇的に変わることはないだろう」と思ってます。でも、急に、なにかを境に変わるのではなく、こんなふうにだんだんと成長していくうちいつのまにかぜんぜん違うお芝居もするようになっているかもしれないなぁとは思います。
蒲田のヤスもある種「いかにも風間くん」な役でしたから、たとえば思いも寄らない役がきたりしてなにかが起こるかなーと思っていたこともありますが、でも、なんか外からのきっかけによるブレイクポイントとかなさそうなんだよね。勝手な印象ですけど。
それと、「こんな役をやってほしい!」というのは私の場合「アメリカ」の弟で願うより先に達成されてしまった、と言うのもあります。なので、これからも、いろんな役をと言うより、いろんな人とお芝居をし続けていただきたいです。


22日に突然アドリブ箇所ができたので、これからだんだんと役者の皆さんの力によって、一番良い部分を使って物足りない部分を補うように発展していくのかなーと思うと楽しみです。
カンパニーの皆さんが笑顔で千秋楽を迎えられますよう。風間さん、きっちり勤め上げられますよう。