子どもが先か大人が先か

3月24日から29日まで、ちょうど1週間かけて「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」を全話見ました。

これは子どもはルパンレンジャーが好きだろうなぁ。そして大人は朝加圭一郎が大好きだろうなぁ。
圭一郎はまっすぐな道をまっすぐに邁進していて、それは子どもにはいちばん簡単でつまらない道に見えるだろう。その道を縦横斜めに飛び回り、スマートにお宝をかっさらってく快盗はそりゃもうかっこよく見えるだろう。
でも、大人になればなるほどまっすぐな道をまっすぐに行くほど困難なことはないとわかるから、大人は圭一郎のやることなすことに胸が熱くなってしまう。

捨て身と自己犠牲は子どもの必殺技で、その場しのぎと先送りは大人の必殺技だ。後者はいかにもかっこ悪いね。でも圭一郎はそうやって、世界の平和と快盗の命を留保した。
だからってルパパトは、「大人が子どもを助ける話」じゃない。それはいつだって先を越されて戦力も上回る快盗の力を借りて、警察がようやくギャングラーを退治していたからじゃない。大人は子どもの存在があって初めて、その相対的存在としてどうにか大人をやっているに過ぎないからだ。
自分の子でなくていい。守りたいもの、育てたいもの、なにか残したいもの、そんな切実なものがないと、大人なんてやっていられない。
この先も続く組織を跡取りに残そうとしていたドグラニオが、突然自ら暴れ出したのは、彼が大人の役割を捨てたからだった。たくさんの子分を失い、なによりデストラを失った。孝行息子のような右腕を失くしたドグラニオには、残したいものも無くなってしまった。ゴーシュもいらない。
子どもは大人を支えていることに気づかない。大人も子どもに支えられていることに気づかない。でも失った時、その身を支えることもできないほどの「老い」が大人の背中には降り積もっている。

どうしてVSチェンジャーとVSビークルが国際警察日本支部に支給されたのか知りたかった。もしもその理由が、同じ装備を持っているルパンレンジャーが日本にいるからだとしたら、ルパンレンジャーがいなければパトレンジャーはいなかったことになる。そうだとしたら、子どもがいて初めて大人が生まれる美しい一本の線が描けると思った。
何度も見返したけれど、「ノエルは国際警察にルパンコレクションがあるとわかって潜入した」「警察に支給された装備はノエルがコレクションを改造したもの」「でもそのコレクションが日本支部に配備されたのはノエルにとって『痛恨のミステイク』」ということまでしかわからなかった。

でも物語はたった一本の線になんてならなくていいんだとも思った。ぶつかりあって絡み合ったこの物語の先には、もっとすごいことが待っている。だって今ルパンレンジャーに熱狂した子どもたちが何十年か後にもう一度ルパパトを見るとき、まるで初めて出会ったかのようにパトレンジャーのたまらないかっこよさに痺れるんだぜ。それはもう絶対に、必ず。逆にパトレンジャーが好きだった子は、ルパンレンジャーの刹那的な生き方の美しさに気づくかもしれない。物語が物語を超えて、時空を超えて、ひとりの人の人生に重なる劇的な未来がもうすでにあると決まっている。何しろ東映特撮ファンクラブは今から50年前の「河童の三平 妖怪大戦争」だって配信してるんだから。

とはいえこのヒネた私ですら、その頃にはまっすぐな道をまっすぐに行くことがほんとうにいちばん簡単である世の中になっていればいいと少しだけ本気で思ってしまう。無理だろうけどねと予防線を張りながら、でもそんな青臭いことを考えてしまう。ニチアサを見た後は。

はじめましてとまた会うほどに

侍戦隊シンケンジャー」ってご存知ですか。2009年から2010年にかけて放送されたスーパー戦隊シリーズの第33作。私は知りませんでした。主演のシンケンレッドは今をときめく松坂桃李さん、メインの脚本は小林靖子さん。
このシンケンジャーが放送から10年を記念したかなんかで、YouTubeで毎週2話ずつの配信が始まったのが3月8日のこと。周りでシンケンジャーおもしろいよと言っている人が複数いるのでちょっと見てみようかなと私が再生してみたのが9日深夜のこと。
そこから日月火の3日間で全49話をプライムビデオで視聴し、水木2日間でHuluに入って劇場版の「侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 天下分け目の戦」と「侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG!!」と「天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックon銀幕」と、Vシネマ「帰ってきた侍戦隊シンケンジャー 特別幕」を視聴し、アマプラに戻って仮面ライダーディケイドの24話と25話を見て、金曜日にはiTunesで買ったOPとEDを聴きながらマーケットプレイスから届いた『侍戦隊シンケンジャー公式読本 真剣勝負!』を熟読し、土曜日は「侍戦隊シンケンジャーファイナルライブツアー2010」を見て、日曜日に雑誌と写真集とDVD注文してそれの一部が今日届きました。
いやーーーーめちゃめちゃめちゃめちゃおもしろい! すごい! すごいとしか言えない! あのまだ見たことない人は今すぐこれ閉じて見てください。そしてくれぐれもWikiを見ないでください特に「侍戦隊シンケンジャーの登場人物」の方! 致命的なネタバレがあります! あれ誰か消せないの⁉︎ まぁ私も今からネタバレ書くんですけど、何も知らない人がちらっと目にしてやばいような決定的な単語は書きませんが、でもとにかくなにも知らずに見て欲しいからまだ見てない人は以下読まないでくださいー!

 

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